転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー14

 「え? ちょ、これ……死ぬんですか?」

 

 衝撃のあまり、思わず装置から飛び退いていた。

 

 危ない。

 その説明は最初に言うべきでは?

 

 「四肢がはみ出していなければ問題ないよ」

 

 ソンジさんは落ち着いた声で言う。

 

 「この装置は、いわば“切り取りと貼り付け”だ。指定範囲を一度消去し、別座標へ再配置する。転移魔法というのは、要するにその処理を魔法式で行っているだけなんだよ」

 

 「き、切り取り……貼り付け……?」

 

 頭の中で、無機質な処理画面が浮かぶ。

 

 「パソコンと同じ理屈さ。囲った部分だけを移動させる。だから範囲外は対象外。単純明快だろう?」

 

 「単純だけど怖いんですよその説明」

 

 「まあ、生身で転移魔法を使える連中は別系統の理論だろうけどね。私は私なりのアプローチさ」

 

 なるほど。

 デジタル的発想の魔導工学、というわけか。

 

 分かりやすい。

 分かりやすいが、命がかかっている。

 

 「と・に・か・く!」

 

 ぱん、と手を叩く。

 

 「余計なことをしなければ問題ない。早く乗った乗ったー!」

 

 「問題ないって言われた直後に“最悪死ぬ”って聞いてるんですけど……」

 

 それでも、ここで引き下がるわけにもいかない。

 

 一度了承した以上、やるしかない。

 

 ――これが成功すれば、今後の学園生活は格段に楽になる。

 

 そう自分に言い聞かせ、再び装置の上へと乗る。

 

 「よし。全身ちゃんと収まってるから安心して」

 

 「……ふぅ」

 

 両足をきっちり揃え、腕も体側に寄せる。

 身長測定のときのように、できるだけコンパクトに。

 

 「一応言っておくと、転移時は距離感が一瞬で切り替わるから脳が混乱する。気分が悪くなるかもしれない。目は閉じておくことを勧めるよ」

 

 「こ、こうですか?」

 

 ぎゅっと目を閉じる。

 

 「私がオッケーと言うまで開けないように。それじゃ、魔力を流してごらん」

 

 ――いくしかない。

 

 足元へ意識を集中させ、魔力をゆっくり流し込む。

 

 視界は闇。

 

 何が起きているのか分からない状態というのは、想像以上に不安を煽る。

 

 「よしよし、いい感じだ。あと少し」

 

 どこか楽しげな声が聞こえる。

 

 足元から、低い機械音のような振動音が響き始めた。

 

 ブゥン……という、かすかな共鳴。

 

 「……っ」

 

 微細な揺れが足裏を伝う。

 

 地震とは違う、内側から空間が軋むような感覚。

 

 「いいよいいよ。それじゃあ――起動!」

 

 その合図と同時に、

 

 ――閃光。

 

 目を閉じているはずなのに、瞼越しに白が突き刺さる。

 

 世界が一瞬、裏返るような感覚。

 

 上下左右の感覚が消える。

 

 身体が“消される”ような、妙な浮遊感。

 

 「ッ……!」

 

 叫び声は出なかった。

 

 時間の感覚が歪む。

 

 一瞬だったのか、数秒だったのか分からない。

 

 やがて、振動が止んだ。

 

 静寂。

 

 「……よ。もう目を開けていいよ」

 

 遠くから聞こえる声。

 

 「んっ、んん……」

 

 恐る恐る瞼を開く。

 

 視界がゆっくりと焦点を結ぶ。

 

 「……お、おお?」

 

 さっきまで入口の前に立っていたはずの自分が、今は作業スペースの手前。

 

 目の前には、腕を組んで満足げに頷くソンジさん。

 

 背後を振り返ると、五メートル先にもう一枚の装置が見える。

 

 ――成功だ。

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