転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー18

 それから五日後。任務まで残り二日となったこの日も、俺はいつも通り野原をひたすら走らされていた。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

『いい調子だレールステン。このままペースを落とすなよー!』

 

「は、はい!」

 

だが、以前のようにヘロヘロになりながら走ることはもうない。呼吸は荒いものの、一定のペースを保ったまま走り続けられていた。

 

目標を掲げて必死に取り組んできたとはいえ、正直ここまで短期間で変われるとは思っていなかった。

もしかすると、この身体の基礎的な身体能力が生まれつき高かったのかもしれない。前世では運動音痴だった自分からすれば、なおさらそう感じてしまう。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

「へぇ……へぇ……へぇ……」

 

そして、それはどうやら自分だけではないらしい。

 

後ろを振り返ると、ミオがしっかりと一定の距離を保ってついてきている。さらにその後ろでは、ギリスケも息を荒くしながら必死に食らいついていた。決して余裕がある様子ではないが、それでも離されずに走り続けている。

 

周囲を見渡せば、他の生徒たちもそれぞれ必死に足を動かしていた。誰一人として簡単に諦める様子はない。皆、任務を前にして気合が入っているのだろう。

 

ちなみにマヒロは、今ここにはいない。

スタンガン式木刀の完成に向け、ここ数日はずっとソンジさんの工房に入り浸っているらしい。

 

もう残された日数はあまりない。本当に間に合うのだろうか。

出来ることなら、任務前に一度くらい試し振りしておきたいところなのだが。

 

そんなことを考えているうちに、授業は終わりを迎えた。

 

『よーし、今日はここまでだ。明後日から任務が始まる為、明日の魔法学の授業は休みとする。任務当日に備えてゆっくり休めよー!』

 

「はあ……はあ……ふー……」

 

どうやら考え事をしているうちに最後まで走り切っていたらしい。

それどころか、バテることなく完走したのはこれが初めてだ。

 

最初の頃と比べれば、体力は明らかに伸びている。

元々の身体能力もあるのだろうが、毎日の自主練も決して無駄ではなかったということだろう。

 

……あと、寮の風呂の効果もあるかもしれない。

 

「レールステン。ちょっといいか?」

 

「はい?」

 

授業が終わり、着替えを取りに教室へ戻ろうとしていたところで、先生に呼び止められた。

 

正直なところ、今は汗だくで早く着替えたい。

だが、呼ばれた以上は無視するわけにもいかない。

 

「今日は最後までよくペースを落とさずに走り切ったな」

 

「は、はい」

 

「お前は今日で走り込みの訓練を終了とする」

 

「ッ!? 先生、それって……」

 

思わず目を見開く。

 

「合格ってことだ。よく頑張ったな」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。

 

ギリギリではあるが、目標は達成できた。

ここまで続けてきた努力が、ようやく報われた瞬間だった。

 

「次からはオーヴェン先生が本格的に見てくれる。しっかりやれよ!」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

自然と感謝の言葉が口をついて出る。

 

いよいよ、本格的な魔法の授業が受けられる。

そう思うと、胸の奥が高鳴って仕方がない。

 

……もっとも、その前に任務をしっかりこなさなければならないのだが。

 

だが、この時の自分はまだ知らなかった。

 

まさか、あんな事態に巻き込まれることになるとは。

 

想像すらしていなかったのだ。

 

――転生勇者が死ぬまで、残り4084日。

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