集落を襲ってから数日後。
俺たちは次の目的地となる集落の近くまで辿り着いていた。
前の集落で奪えるだけ奪った食糧と金を抱え、再び“ブツ”を回収するためだ。
途中、捕まえた集落の女どもでしばらく遊んでいたせいで予定より多少遅れてしまったが……まあ問題はないだろう。
「よし。お前ら、いつも通りいくぞ」
「「おっす」」
集落の近くまで来ると、目的の目印であるタリスターの白い花が群生しているのを確認した。
どうやら“ブツ”は間違いなくここにある。
だが、回収は一旦保留だ。
俺は仲間たちに合図を送り、いつもの作業を開始する。
まずは周囲の状況把握。
タリスターの花がどこまで広がっているのか。魔物の出現状況はどうか。さらに集落にいる人間の数、見張りの配置、建物の構造――襲撃の準備に必要な情報を徹底的に洗い出す。
ただ突撃するだけの馬鹿共とは違う。
それが俺たちのやり方だ。
闇取引で手に入れた透明化のマント型魔道具を頭から被り、足音を消す特殊なブーツを履く。
姿も音も消したまま、俺たちは静かに集落の様子を探り続けた。
この団を結成してまだ半年ほどしか経っていない。
だが、それでも既に頭の悪い賊どもを凌ぐ勢いで“ブツ”を手に入れてきた。
ああいう連中は何も考えずに突撃する。
だからすぐ騎士団に目を付けられ、捕まるリスクが跳ね上がる。顔を覚えられでもしたら、その後の活動にも支障が出るだろう。
だが、俺たちは違う。
綿密に調査し、確実に襲えると判断した場所しか狙わない。
そして襲撃した後は――ちゃんと後始末もする。
この前の集落も、俺の魔法で人間を一人残らず消してやった。
あいつら、言うことを聞けば助かると本気で思ってやがった。
あれには思わず笑ってしまったな。
悪党がそんな生ぬるい真似をするわけがないだろうに。
女は使い道がある。
だが、男手はもう必要ない。
「……ん?」
集落の様子を観察していると、妙に目立つ姿が二つあった。
白く分厚い鎧。
あれは――騎士団か。
どうやらしっかり警戒されているらしい。
まあ、ここ最近あれだけ騒ぎを起こしていれば、騎士団も動かざるを得ないだろう。
「でも、あれ二人だけっすかね?」
隣で観察していた仲間の一人が鼻で笑う。
「あんな数で俺たちから集落の連中守れるってか? 随分舐められてますね」
確かに。
こちらは十五人。向こうはたった二人。
魔法なしでやり合えば、まず間違いなくこっちが勝つ。
だが――。
「向こうの大半は魔法学園を卒業した優秀な魔法使いだ」
俺は低く言った。
「魔法相手じゃ、数のゴリ押しはあまり有効じゃねぇ」
忠告すると、仲間は少し不満そうな顔をした。
「じゃあ、ここは諦めるんですか? ここまで来たのに?
それにブツだって目の前にあるんすよ?」
まあ気持ちは分かる。
徒歩でここまで来た上に、目的のブツもすぐそこだ。
今考えると、あの場で回収できなかったのは確かに少し痛い。
だが――
「……いや」
俺は小さく笑った。
「『アレ』があれば、なんとかなるだろ」
その言葉に、仲間の顔がにやりと歪む。
「おっ、それじゃあ……」
ああ、問題ない。
どれだけ優秀な魔法使いを寄こそうが、関係ない。
俺には――奴らをねじ伏せる魔法がある。
「奪いに行くぞ」
そう言い放ち、俺は襲撃を決行した。