『おー、それが完成品?』
「最初に見たやつと、だいぶ変わったね」
「けどさ、名刀って名乗るのはちょっと気が早くね? まだ前のやつとどれくらい性能が違うのか、試してもいねーしさ」
「ふっふっふ、そう慌てなさるな皆の衆。まずはこれをご覧になられよ!」
自慢げに掲げられたそれ――スタンガン式木刀改め《雷電》を改めて観察してみる。ミオの言う通り、最初に見せてもらった試作品とはかなり形状が変わっていた。以前のものはどちらかと言えば木刀に近い形状だったが、今の雷電は先端がやや太くなり、全体的にしなやかな曲線を持っている。どちらかと言えば剣道で使う竹刀に近い印象だ。
まあ、木刀も竹刀も似たようなものと言えば似たようなものだが、実際に手にしてみると、その違いは意外と大きいのかもしれない。
見た目が大きく変化した雷電を鼻高々に掲げるマヒロは、試しにとばかりに刀身へ魔力を流し込んだ。
すると、前の試作品とは明らかに違う現象が起きた。以前は刀の外側に雷を纏わせるような形で電気が走っていたが、今回の雷電は違う。外へ放出されるのではなく、刀身の内部――剣先の内側に青白い光が走り、静かに雷が脈打つように輝いていた。
「内側に仕込んだのか」
思わずそう呟く。
「うむ。きゃぱ……とやらを減らさぬように、雷電全体に細工を施したものらしいでござる。詳しい仕組みは拙者もチンプンカンプンでござるが」
マヒロは胸を張って説明するが、どうやら理屈そのものは理解していないらしい。とはいえ、雷が刀身の内部に収まっている様子を見る限り、確かに以前より安全そうには見える。
「でも、こんなんで本当に感電させられびゃっ!?」
「ギリスケ?!」
迂闊だったのはギリスケだった。
安全そうだと感じたのか、魔力を流したままの雷電の剣先に軽く触れてしまったのだ。
次の瞬間――
バチッ!!
小気味よい音と共に電流が走り、ギリスケの体がビクンと跳ねる。そのまま糸の切れた操り人形のように崩れ落ち、見事にその場で気絶してしまった。
……任務前に何やってるんだ、こいつは。
「帯電中に触れるのは危険でござるよ、ギリスケ殿」
「……それは前もって言ってくれないと困るよ、マヒロ」
地面に倒れたままのギリスケを見下ろしながら、呆れた声を漏らす。
注意するのはいい。だがせめて触ろうとしている時点で止めてほしかった。
しかしマヒロはまったく気にした様子もなく、雷電をくるりと回して続けた。
「ちなみにでござるが、ここのスイッチを切り替えると――七色に光らせることも可能でござる!」
カチリ。
スイッチを切り替えた瞬間、雷電の刀身が赤、青、緑、紫と、次々に色を変えながら輝き始めた。
『おー、カッチョイイー』
フィーは素直に感心したような声を上げる。
しかしミオは首をかしげた。
「虹色に光らせる意味ってあるの?」
「特に意味はないそうでござる。強いて言うなら――『七色に光らせるのは全人類の願望』と、ソンジ殿が言っていたでござる」
「……」
その場に微妙な沈黙が流れた。
気絶したままのギリスケを横目に、マヒロは雷電の追加機能を誇らしげに紹介しているが……どう考えても、ただのゲーミングカラー仕様である。
武器にそんな機能を付ける意味があるのかは正直分からない。そもそも「全人類の願望」というのは、さすがに話が飛躍しすぎている気がする。
ソンジさんは一体、何を思ってこんな機能を搭載したのだろうか。
「しかし、早く実戦で試してみとうて腕がうずうずするでござる」
雷電を軽く振りながら、マヒロは楽しそうに言った。
「いや、それ護身用で作ってるんだから、自分から試しに行くのは本末転倒な気がするけどな……まあ、いっか」
どうやら彼女の頭の中では、すでに賊との戦闘まで想定されているらしい。
マヒロは今か今かと素振りを繰り返し、高まる気持ちを抑えようとしているようだった。
だが、こちらとしては――
できれば敵と鉢合わせるような事態にはならないでほしい。
そんなことを思いながら、俺は彼女の高揚を止めることなく、ただ静かに見守るのだった。