転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

216 / 244
第6章ー25

 「とにかく、奴らを甘く見るなよって話がしたかっただけだ。特にマヒロ。お前みたいな戦闘狂は、特に気を付けろよ?」

 

 コールスタッシュ先生はため息混じりにそう言いながら、マヒロを指差した。

 

 「むむ。師範、拙者を見くびるでない。一戦交える相手を見くびったりはしないでござる!」

 

 マヒロは胸を張り、自信満々に言い返す。

 

 「戦う前提で話進めんな。あと、俺はいつからお前の師匠になったんだよ?」

 

 先生が呆れたように眉をひそめる。

 

 「拙者、教えを乞う相手は師範として敬う所存!」

 

 「……あっそ」

 

 マヒロの勢いに、先生は完全に面倒くさくなったようだった。

 

 賊を甘く見るなと何度も念を押したあと、さらにマヒロに向けて厳重注意を促したのだが、「師範」という呼ばれ方もどうやら気に入らなかったらしい。とはいえ、マヒロの妙な熱意に押されたのか、それ以上は追及せず話を切り上げた。

 

 滅茶苦茶言いたいことがありそうな顔はしていたが、きっと面倒くささの方が勝ったのだろう。

 

 「木刀(コイツ)を渡すのはあくまで護身用だ。もし賊と鉢合わせて、接敵しそうになった場合は、集落の人間を避難させつつ撤退しろ。賊の対応は基本、騎士団に任せておけ」

 

 「なぬ!? それでよいのでござるか? 任務に協力してくれるのは二人だけなのでござろう?」

 

 『たしかに。向こうが仮に倍以上の数で襲ってきたら大変だよ?』

 

 先生の話はまだ続いていた。万が一賊と遭遇した場合には、レルトの人々を避難させたうえで撤退しろという提言だった。

 

 それに対してマヒロとフィーがすぐに反論する。

 

 しかし、二人の言っていることは決して的外れではない。

 もし相手側に頭の切れる指揮役がいるのだとすれば、二、三人で行動するより、もっと多い人数で動く可能性の方が高いだろう。

 

 そうなると、騎士団の二人だけに対応を任せるのは少々酷ではないだろうか。

 その間にこちらががら空きになり、自分たちが襲われる可能性だってある。

 

 そんな疑問が頭をよぎった。

 

 「ふー……。あのなぁ」

 

 先生は深く息を吐き、少し呆れたように言った。

 

 「賊を甘く見る前に、頼もしい味方まで軽んじんなよ。騎士団の半数以上は、この学園の卒業生だ」

 

 腕を組みながら、先生は淡々と続ける。

 

 「中には学園出身じゃない奴もいるが、どいつも厳しい訓練と試験を乗り越えてきた連中だ。いわば猛者どもの巣窟ってわけだな」

 

 そして、ちらりとこちらを見て、少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 「はっきり言って、お前らみたいに運よく受かった連中とは違う。入学できたくせにすぐ音を上げて辞めていく軟弱共ともな。実力も経験も段違いだ」

 

 ……さらっとディスられた。

 

 「要するにだ。お前らなんかに心配されるほど、あいつらはか弱くねぇってことだ。相手が大勢現れようが、多少策を弄されようが、簡単にやられるような連中じゃない」

 

 先生はそこで一度言葉を区切った。

 

 「新人の中にも優秀な奴は多い。問題はねぇよ」

 

 そして最後に、少しだけ声のトーンを落として付け加える。

 

 「あるとするなら――お前らが余計なことして、先輩方の足を引っ張ることくらいだ」

 

 「……」

 

 その言葉に、誰も何も言い返せなかった。

 

 先生は皮肉を交えながら騎士団の実力を説明してくれたが、内容自体は至極真っ当だったからだ。

 

 正直、ところどころでディスられたのは少し癪ではある。

 だが、反論する材料がないのも事実だった。

 

 実際、リーヴ村での出来事を思い出してみる。

 あの時はリーフさんが一人で事件を解決してしまったため、自分たちは賊を連行するだけで済んだ。

 

 だが、その後の騎士団の動きは見事だった。

 

 都市から離れた場所まで来ていたにもかかわらず、誰一人として動きを乱すことなく、整然と村を後にしていったのだ。

 

 しかも彼らは、あんな重そうな鎧を身につけていた。

 普通の体力では、とても長時間動けるような装備ではない。

 

 それでも、まるで何事もないかのように行動していた。

 

 ……そう考えると。

 

 先生の言っていることは、決して誇張ではないのかもしれない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。