転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー30

 それはさておき、まずは今の状況を整理しなければならない。

 

 レルトへ向かう道中、進行方向の先に不自然な煙を確認。嫌な予感がして、自分はブザーを鳴らして応援を呼ぼうとした。

 

 ――その瞬間だった。

 

 おそらくかなり前から馬車に潜んでいた金髪の男が突如現れ、ブザーを強奪。そのまま馬車から離脱し、姿を消した。

 

 そして直後。

 

 魔導馬が何かを察知したかのように暴れ出し――次の瞬間、地面が爆発。

 

 フィーの結界のおかげで、なんとか全滅は免れた。

 

 「……」

 

 改めて整理してみても、異常な出来事の連続だ。

 

 現在、自分たちがいるのは爆発地点から数メートルほど先。爆風で前方へ吹き飛ばされたのだろう。

 

 振り返って爆心地を見ると、そこは大きく抉れ、まるでクレーターのように地面が陥没していた。黒煙が立ち上り、まだくすぶる火がちらほらと見える。

 

 ……あの爆発に直撃していたら、間違いなく全員即死だった。

 

 背筋に冷たいものが走る。

 

 それにしても――

 

 あの爆発は一体何だったのか。

 

 魔法か? それとも魔道具によるものか?

 

 そもそも、なぜこんな何の変哲もない街道で爆発が起きた?

 

 偶然とは思えない。

 

 やはり、あの金髪の男が関与している可能性が高い。

 

 男が口にしていた「“あの場所”に着きそうだ」という言葉。

 

 おそらく、それはこの爆発地点を指していたのだろう。

 

 となると――目的は何だ?

 

 自分たちを殺すことか?

 

 だが、それには前提として、自分たちがこの時間にここを通ると知っている必要がある。

 

 あの男は馬車に潜入していたとはいえ、仲間と連絡を取っていた様子はなかった。この狭い空間で気配を消しながら通信など、いくらなんでも無理がある。

 

 姿や足音を消せても、物音や不自然な動きまでは完全に消せないはずだ。そんなリスクを負うとは思えない。

 

 ならば、狙いは別にあったのか?

 

 それとも、無差別に人を襲うつもりだったのか?

 

 ……いや、それもおかしい。

 

 無差別なら、わざわざ自分たちの馬車に潜入する必要がない。

 

 やはり、標的は自分たちだった可能性が高い。

 

 だとすると――

 

 いつから狙われていた?

 

 男の発言から察するに、少なくとも馬車内で作戦会議をしていた時点では、すでに潜んでいたはずだ。

 

 つまり、ソワレルを出て間もない頃には侵入されていたことになる。

 

 あの時点で、すでに狙われていたのか?

 

 それとも、進行方向が同じだったために様子見で乗り込み、そのまま機を窺っていたのか。

 

 可能性はいくつもあるが、決定打がない。

 

 「……」

 

 考えれば考えるほど、答えは遠のく。

 

 嫌な汗がじわりと滲んだ。

 

 『サダメ! サダメ!?』

 

 「ッ!? ご、ごめん――どうしどぅわっ!?」

 

 フィーに呼ばれて我に返った、その瞬間だった。

 

 「きゃっ!?」

 

 ガタンッ!!

 

 再び、馬車が大きく揺れた。

 

 今度はただの揺れではない。

 

 車体が前方へ滑るように傾き、そのまま勢いよく横転した。

 

 視界がぐるりと回転し、衝撃とともに体が叩きつけられる。

 

 数秒後。

 

 ようやく動きが止まり、馬車は横倒しのまま静止した。

 

 ……何が起きた?

 

 「いててて……」

 

 身体を起こしながら、状況を確認する。

 

 「あ、あの! 大丈夫ですか?! 今度は何があったん――」

 

 自分の擦り傷などどうでもいい。

 

 まずは御者の安否だ。

 

 そう思い、慌てて窓の方へと身を寄せる。

 

 横転した馬車の隙間から、外の様子を覗き込んだ。

 

 「ッ!? これは……」

 

 息が詰まる。

 

 そこにあったのは――

 

 脚から血を流し、地面に倒れ込んでいる魔導馬。

 

 そして。

 

 頭部から血を流し、ぐったりと動かない御者の姿だった。

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