転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー33

 「それで、作戦とはどういうものでござるか?」

 

 「ああ、それを今から説明する」

 

 マヒロに急かされるように、自分は短く息を整え、頭の中でまとめた作戦を口にする。

 

 「まず、フィーに結界を一度解除してもらう。その直後、俺が光魔法で目くらましを仕掛ける」

 

 『でも、後ろにも何人かいると思うよ? 大丈夫なの?』

 

 フィーの不安はもっともだ。完全に包囲されている以上、前だけ対処すればいい話ではない。

 

 「なるべく上に向かって強力なのを撃つ。光を広く拡散させるつもりだ。皆はその間、下を向いてしっかり目を閉じててくれ」

 

 「して、拙者はどうすればよいでござるか?」

 

 「魔法を撃ったあとに合図を出す。その隙に前方の敵を一気に無力化してくれ。後ろは俺がなんとかする」

 

 「承知した!」

 

 マヒロは迷いなく頷く。その声音には一切の不安がなく、頼もしさすら感じさせた。

 

 「それと、俺は後ろの敵を片付けたあと、そのままレルトの方へ向かうつもりだ。向こうの状況も確認したいし、騎士団とも合流したい」

 

 「ふむ……その間、拙者が敵を引き受けるということか?」

 

 「ああ。できれば連中を馬車から引き離してほしい」

 

 「それは構わぬが、何故でござる?」

 

 「フィーに結界を張り直してもらう。その時、今より一回り大きくしてほしいんだ。御者と魔導馬が負傷して動けない。ミオが治療できるだけのスペースを確保したいんだ」

 

 自分の言葉に、マヒロは納得したように頷いた。

 

 「なるほど、そういうことでござるか。承知した、任されよ」

 

 『うん……ちょっと大変そうだけど、やってみる』

 

 「頼む」

 

 フィーの表情には不安も見えるが、それでも覚悟は決まっているようだ。

 

 「結界が張り直されたら、ミオはすぐに御者と魔導馬の治療に当たってくれ」

 

 「うん、分かった!」

 

 ミオも力強く返事をする。

 

 全員がそれぞれの役割を理解し、頷いた。この作戦は一人でも崩れれば成立しない。負担も大きいが、今の状況を打開するにはこれしかない。

 

 『そういえばさ、ギリスケ君はどうするの?』

 

 「……んっ、んん……」

 

 当の本人は、そんな緊迫した空気などどこ吹く風とばかりに、未だ呑気に寝息を立てている。

 

 「……後で適当に叩き起こして、こき使ってくれ」

 

 『あいよー』

 

 思わず呆れが混じる。今にも命の危険がある状況だというのに、この余裕――ある意味大物なのかもしれないが、今はただの戦力外だ。

 

 説明している時間すら惜しい。ここはフィーたちに任せるしかない。

 

 「とりあえず、俺が合図を出す。そしたら全員、下を向いて――」

 

 「おっと、そういえばサダメに渡すものがあったでござる」

 

 「? 俺に?」

 

 作戦開始直前、マヒロが思い出したように声を上げた。この状況で何を――と一瞬訝しむ。

 

 「これでござる!」

 

 差し出されたのは、小型の雷電だった。

 

 「ッ!? これは……」

 

 マヒロが持っているものよりも明らかに小さく、長さはせいぜい誘導棒ほど。だが、その刀身からは確かに雷の気配が感じられる。

 

 「雷電ほど射程はないし、威力も落ちているでござる。しかし、懐に入り込めば十分に相手を無力化できると、ソンジ殿が言っておった。単独で動くなら、持っておいた方がよいでござろう」

 

 「ああ……助かる。ありがとう」

 

 思わぬ支援に、素直に礼を言う。

 

 「ちなみにその刀の名は【小刀《しょうとう》・迅雷】! 格好いい名でござろう?」

 

 誇らしげに胸を張るマヒロ。その目はきらきらと輝いている。

 

 「……あ、ああ」

 

 内心、少しだけ安直な気もしたが――この様子を見る限り、相当気に入っているのだろう。余計なことは言わない方がいい。

 

 「よし……じゃあ、行くぞ!」

 

 迅雷を握り直し、自分は覚悟を決める。

 

 「うん!」

 「うむ!」

 『おー!』

 

 三者三様の返事が重なる。

 

 すべては、この一手にかかっている。

 

 息を整え、合図の瞬間を見定める――そして、自分はついに作戦を決行に移した。

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