「瞬く光耀よ――我らを照らす道しるべとなれ!」
作戦を実行に移した自分は、仲間たちと同様に顔を伏せ、固く目を閉じながら、天井へと掌をかざして詠唱を紡ぐ。
問題は威力の調整だ。
全力で放てば、光は収束しすぎて“柱”のように直線的に伸びてしまう。そうなれば直撃させない限り効果は薄い。だが逆に抑えすぎれば、今度は目くらましとしての役割を果たせない。
ならば――八割。いや、七割か。
周囲の敵の視界を奪えるだけの強さを保ちつつ、拡散性を維持する絶妙な加減。賭けに近いが、やるしかない。
「フィー、頼む!」
『オッケー、結界解除!』
自分の合図と同時に、フィーが結界を解いた。
「お? なんだ急に……?」
「ははっ、理由は知らねぇが今がチャンスだ! 全員で引きずり出せぇ!!」
外で様子を窺っていた連中が、一斉に色めき立つ。待ち構えていた獣のように、馬車へと殺到してきた。
――だが、それも織り込み済みだ。
「……よし、今だ! 【ゆらめく炎の光球《フレア・ライト》】!!」
「ッ!?」
結界解除から数秒。敵が動き出したその瞬間を狙い、自分は上方へと魔法を解き放った。
光球は天井を突き破り、勢いよく空へと昇っていく。
「ぐわぁっ!?」
「め、目がぁああっ!?」
強烈な閃光が周囲を包み込み、敵たちから悲鳴が上がる。狙い通り、光は拡散し、広範囲に影響を与えているようだ。
「……うっ」
まだ完全に収まらない光の余韻の中、恐る恐る目を開ける。視線は下に向けたままだが、天井に空いた穴から差し込む光によって、外の人影がくっきりと浮かび上がっていた。
光球はまだ上昇中。この瞬間こそが最大の好機だ。
「マヒロ! 今だ!!」
「ぬっ!? 承知した!!」
合図を受けたマヒロが、即座に動いた。
雷電を手にしたまま、視線を落とした状態で馬車の外へと飛び出す。
「成敗致す! はあぁっ!!」
「ぐわっ?!」
「ぐえっ!?」
「どぅわっ!?」
瞬く間に、馬車へ接近していた三人の男が崩れ落ちた。
「ッ!? 速っ……!」
目が慣れていないはずの状況で、この速さ。太刀筋すらまともに追えなかった。まさに一瞬の出来事だ。
――さすが、マヒロ。
「……はっ、見惚れてる場合じゃねぇ」
思わず見入ってしまったが、自分もすぐに動かなければならない。後方にいる敵を抑えなければ、結界の再展開に支障が出る。
「フィー、ミオ。行ってくる」
「サダメ、無理しないでね?」
「ああ、分かってる」
『サ、サダメ! 急いで!』
フィーの焦った声が飛ぶ。そうだ――結界を張り直す前に、敵を十分に引き離さなければ意味がない。
「悪い、すぐ行く!」
短く応え、自分は天井に空いた穴から外へと飛び出した。
手には、マヒロから託された小刀――迅雷。
足元を確認する間も惜しみ、着地と同時に駆け出す。向かう先はレルト方面。だが、その道中にいる敵はすべて排除する。
視界はまだ完全ではない。だが、敵も同じ条件のはずだ。
ならば――勝機はある。
迅雷を構え、自分は迫り来る敵を迎え撃ちながら、一直線に駆け抜けた。