転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー41

 ――ちっ。

 

 やられた。

 

 あまりにも興奮しすぎて、不意打ちに気づけなかった。挙げ句の果てに、防御魔法まで張りやがるとはな。

 

 おかげで、俺は何もできずにその場で立ち尽くす羽目になった。

 

 「……クソが」

 

 舌打ちが漏れる。

 

 想定外だったのは、もう一人がこのタイミングで現れたことだ。いや、増援が来る可能性自体は織り込み済みだった。問題は“来方”だ。

 

 普通は二人同時に来るだろうが。

 

 時間差で来るとか、地味に一番めんどくせぇパターンじゃねぇか。

 

 「ホープさん」

 

 「ああん?」

 

 考えを巡らせていると、不意に後ろから声がかかった。

 

 振り向かずとも分かる。ルーフェスだ。

 

 ……ったく、気配を一切感じなかったな。

 

 どうやら【気配殺し《サイン・キラー》】のマントに加えて、【完全沈黙《パーフェレンス》】のブーツまで使ってやがるらしい。

 

 あの装備は全員に持たせているが、ここまで自然に使いこなせるのはこいつくらいだ。

 

 だからこそ、情報収集みたいな面倒な仕事は全部こいつに押し付けている。

 

 今回、この集落にタリスターの花があるって情報も、こいつが拾ってきたもんだ。

 

 ……使える駒が一人いるだけで、だいぶ楽になるもんだな。

 

 「さっき報告した馬車の件ですが……少々厄介な状況になりまして」

 

 「……何?」

 

 眉をひそめる。

 

 「腕の立つ女が一人いまして。そいつに、こちらが苦戦を強いられているようです。いかがなさいますか?」

 

 「……はぁ?」

 

 思わずため息が出た。

 

 「女一人相手に、何やってんだあいつらは」

 

 苛立ちが増す。

 

 「お前が行って片付けてこい。俺はこっち終わらせてから合流する」

 

 「っ!? お、俺がですか!?」

 

 素っ頓狂な声を上げやがった。

 

 「当たり前だろうが」

 

 低く吐き捨てる。

 

 「その魔道具、一番まともに使えてんのはお前だろ? だから特別に他のも渡してやってんだよ。頭使ってなんとかしろ」

 

 一歩、間を詰める。

 

 「……今、虫の居所が悪いんだ。これ以上ごちゃごちゃ抜かすなら――殺すぞ?」

 

 「ひ、ひぃっ……! は、はい!」

 

 顔を青ざめさせて頷くルーフェス。

 

 「分かったらさっさと行け」

 

 「は、はいぃ!!」

 

 怒鳴りつけると、奴は慌ててその場を離脱した。

 

 ……もちろん、気配ごと綺麗に消してな。

 

 「……ったく」

 

 肩を鳴らす。

 

 魔道具の扱いは一流だが、判断力は三流。

 

 使えなくはねぇが、いちいち指示を仰いでくるのが鬱陶しい。

 

 全部俺に丸投げしてんじゃねぇよ。

 

 「……はぁ」

 

 軽く息を吐き、視線を前へ戻す。

 

 目の前には、あの女が張った風のドーム。

 

 荒れ狂う気流が壁となって、こちらの侵入を阻んでいる。

 

 「風魔法、か……」

 

 舌打ち。

 

 俺の魔法と相性が悪いわけじゃねぇ。

 

 だが、妙にやりづらい。

 

 吸引も軌道操作も、風に干渉されると微妙に狂いやがる。

 

 正直、面倒な相手だ。

 

 「……ま、いいか」

 

 口元が歪む。

 

 俺には“奥の手”がある。

 

 あれを使えば、こんな小細工ごとき関係ねぇ。

 

 騎士団の連中だって、それでまとめて消してやったんだ。

 

 同じことをやるだけだ。

 

 問題は――

 

 「……気づけるか、どうかだな」

 

 ぽつりと呟く。

 

 奴らが“それ”に気づけなければ、その時点で勝負は決まる。

 

 「――おい、偽善者ども」

 

 風の壁の向こうへ向けて、声を張る。

 

 「いつまで引きこもってんだ?」

 

 嗤いがこぼれる。

 

 「さっさと出てこいよ」

 

 ゆっくりと、一歩踏み出す。

 

 「――テメェらの命、俺が直々に奪ってやる」

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