転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー42

 「大丈夫、サダメ?」

 

 「ああ。おかげさまでな」

 

 ミオの回復魔法のおかげで、瀕死の状態からなんとか立ち直ることができた。体の調子も悪くない。まだ動ける――いや、戦える。

 

 幸いにも、手放していた迅雷はドーム内に落ちており、すぐに回収できた。これがなければ素手で戦う羽目になっていたところだ。ナイフを持った相手にそれはさすがに分が悪い。護身術でも身につけていれば話は別だったのかもしれないが、今さら言っても仕方がない。

 

 「とりあえず、アイツをなんとかしないと」

 

 「えっ?! まだやるの?!」

 

 「ああ」

 

 即答すると、ミオは信じられないという顔でこちらを見た。

 

 「駄目だよ! さっき死にかけてたのに。それに、先生が言ってたでしょ? 私達の目的は集落の人達の避難で、戦闘は極力控えろって。あの人は騎士団の人に任せた方がいいよ!」

 

 「……そのことなんだが……」

 

 言い淀むと、ミオは不安そうに眉を寄せた。どうやら彼女はまだ、事の全容を把握しきれていないらしい。

 

 無理もない。あの光景を実際に見た自分でさえ、未だに現実感が薄いのだから。

 

 自分は一度息を整え、できるだけ冷静に現状を説明した。

 

 「……ウソ。皆、死んじゃったってこと? 騎士団の人も?」

 

 「あいつの言っていたことが本当なら、そういうことになる」

 

 周囲に残る痕跡を思い返しながら、言葉を続ける。

 

 「ここには確かに集落があったはずだ。それなのに建物は跡形もなく壊されているし、血の跡もあちこちに残っている。……死体が見当たらないのは、埋めたか、燃やしたか……いずれにせよ、処理された可能性が高い」

 

 「……酷い」

 

 ミオの顔がみるみる青ざめていく。拳を握りしめ、その体がわずかに震えていた。

 

 当然だ。自分だって同じ話を聞かされたときは、怒りで頭が真っ白になった。

 

 そして今もなお、その怒りは消えていない。

 

 あの惨状を見る限り、ホープの言葉は嘘ではないだろう。騎士団の者の腕――あれも作り物には見えなかった。

 

 だが、納得できない点もある。

 

 どうやって、あそこまで徹底的に破壊できたのか。

 

 死体を隠したことは百歩譲って理解できる。だが問題は建物だ。木造や石造りの家々があったはずなのに、残骸はあまりにも少ない。原型を留めていないどころか、まるで“消された”かのように瓦礫が足りていない。

 

 「……不自然だな」

 

 思わず呟く。

 

 激しい戦闘があったとしても、あそこまで痕跡が薄れるものだろうか。普通なら、もっと大量の瓦礫が残るはずだ。

 

 一体、どこへ消えた?

 

 「……あいつの魔法が関係しているのか?」

 

 脳裏に浮かぶのは、先ほどの不可解な力。

 

 一瞬だったが、あれはおそらく重力系の魔法だ。強い引力で体を引き寄せ、体勢を崩させる――単純だが厄介極まりない能力。

 

 だが、それだけで建物をここまで破壊できるのか?

 

 それとも、別の手段があるのか。あるいは、まだ見せていない奥の手が――。

 

 「……考えてても仕方ないな」

 

 小さく息を吐き、思考を打ち切る。

 

 ここでいくら推測を重ねても、確証は得られない。だったら――直接、確かめるしかない。

 

 「ミオ、力を貸してくれ」

 

 「え? 何するの?」

 

 戸惑う彼女に向き直り、はっきりと言い切る。

 

 「あいつの魔法を攻略する」

 

 もし本当に重力系なら、ミオの魔法で干渉できる可能性がある。相性次第では、突破口になるはずだ。

 

 まずは奴の力の正体を暴く。

 

 ――話は、それからだ。

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