「大丈夫、サダメ?」
「ああ。おかげさまでな」
ミオの回復魔法のおかげで、瀕死の状態からなんとか立ち直ることができた。体の調子も悪くない。まだ動ける――いや、戦える。
幸いにも、手放していた迅雷はドーム内に落ちており、すぐに回収できた。これがなければ素手で戦う羽目になっていたところだ。ナイフを持った相手にそれはさすがに分が悪い。護身術でも身につけていれば話は別だったのかもしれないが、今さら言っても仕方がない。
「とりあえず、アイツをなんとかしないと」
「えっ?! まだやるの?!」
「ああ」
即答すると、ミオは信じられないという顔でこちらを見た。
「駄目だよ! さっき死にかけてたのに。それに、先生が言ってたでしょ? 私達の目的は集落の人達の避難で、戦闘は極力控えろって。あの人は騎士団の人に任せた方がいいよ!」
「……そのことなんだが……」
言い淀むと、ミオは不安そうに眉を寄せた。どうやら彼女はまだ、事の全容を把握しきれていないらしい。
無理もない。あの光景を実際に見た自分でさえ、未だに現実感が薄いのだから。
自分は一度息を整え、できるだけ冷静に現状を説明した。
「……ウソ。皆、死んじゃったってこと? 騎士団の人も?」
「あいつの言っていたことが本当なら、そういうことになる」
周囲に残る痕跡を思い返しながら、言葉を続ける。
「ここには確かに集落があったはずだ。それなのに建物は跡形もなく壊されているし、血の跡もあちこちに残っている。……死体が見当たらないのは、埋めたか、燃やしたか……いずれにせよ、処理された可能性が高い」
「……酷い」
ミオの顔がみるみる青ざめていく。拳を握りしめ、その体がわずかに震えていた。
当然だ。自分だって同じ話を聞かされたときは、怒りで頭が真っ白になった。
そして今もなお、その怒りは消えていない。
あの惨状を見る限り、ホープの言葉は嘘ではないだろう。騎士団の者の腕――あれも作り物には見えなかった。
だが、納得できない点もある。
どうやって、あそこまで徹底的に破壊できたのか。
死体を隠したことは百歩譲って理解できる。だが問題は建物だ。木造や石造りの家々があったはずなのに、残骸はあまりにも少ない。原型を留めていないどころか、まるで“消された”かのように瓦礫が足りていない。
「……不自然だな」
思わず呟く。
激しい戦闘があったとしても、あそこまで痕跡が薄れるものだろうか。普通なら、もっと大量の瓦礫が残るはずだ。
一体、どこへ消えた?
「……あいつの魔法が関係しているのか?」
脳裏に浮かぶのは、先ほどの不可解な力。
一瞬だったが、あれはおそらく重力系の魔法だ。強い引力で体を引き寄せ、体勢を崩させる――単純だが厄介極まりない能力。
だが、それだけで建物をここまで破壊できるのか?
それとも、別の手段があるのか。あるいは、まだ見せていない奥の手が――。
「……考えてても仕方ないな」
小さく息を吐き、思考を打ち切る。
ここでいくら推測を重ねても、確証は得られない。だったら――直接、確かめるしかない。
「ミオ、力を貸してくれ」
「え? 何するの?」
戸惑う彼女に向き直り、はっきりと言い切る。
「あいつの魔法を攻略する」
もし本当に重力系なら、ミオの魔法で干渉できる可能性がある。相性次第では、突破口になるはずだ。
まずは奴の力の正体を暴く。
――話は、それからだ。