転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー43

 「準備はいいか、ミオ?」

 

 「う、うん。大丈夫」

 

 「んじゃあ、行くぞ」

 

 自分が考えた策を手短に伝えると、ミオは不安を残しつつも頷いた。あとは実行あるのみだ。上手くいくかどうかはタイミング次第――だが、奴への対抗策としては悪くない。むしろ、現状で取り得る中では最善に近い。

 

 「解除!」

 

 ミオが張っていた防御魔法を解く。結界が消えた瞬間、外の空気が一気に流れ込んできた。

 

 だが――ホープは動かなかった。

 

 その場に立ったまま、まるでこちらを待っていたかのように。

 

 「よぉ~。作戦会議は終わりか~?」

 

 「……随分余裕そうだな」

 

 ズボンのポケットに片手を突っ込み、気だるげな笑みを浮かべるホープ。その態度からは焦りの欠片も感じられない。こちらが対策を講じていることにも、すでに気づいているはずだ。

 

 それでもなお、この余裕。

 

 やはり、何か奥の手があるのか――。

 

 「はっ! テメーら如き相手、この魔法だけで十分だっての!」

 

 吐き捨てるように言いながら、ホープはナイフを構える。次の瞬間、こちらへ踏み込もうとした。

 

 ――さっきと同じ流れか。

 

 同じ手を繰り返すのは悪手のはずだが、それでも来るということは、それだけ自分の魔法に自信があるということだろう。

 

 「はあっ!」

 

 迎え撃つように、こちらも迅雷を上段に構え、一気に振り下ろす。

 

 「【吸引《サクション》】!」

 

 「ッ!?」

 

 刃を振り下ろす寸前、視界の端で黒い球体が生まれた。直径はせいぜいピンポン玉ほど――だが、その一点に向かって強烈な引力が働く。

 

 体が引き寄せられ、バランスが崩れる。

 

 ――やはり重力系。

 

 まるで小さなブラックホールのような力だ。対象を引き寄せるだけで、粉砕するほどの威力はないようだが、それでも戦闘においては十分すぎるほど厄介だ。

 

 「ミオ!」

 

 「うん!」

 

 あらかじめ距離を取っていたミオに合図を送る。彼女は即座に両手をこちらへ突き出した。

 

 「押し返せ、逆境の風よ――【追い風の軌跡(テイルド・ローカス)】!」

 

 詠唱と同時に、彼女の掌から爆発的な風が噴き出した。トルネードのような渦を伴った突風が、一直線にこちらへと吹きつける。

 

 「なっ?!」

 

 風はホープの魔法に干渉し、その引力を打ち消すかのように上空へと流れを逸らした。さらにその勢いのまま、自分の体を押し返す。

 

 崩れかけていた体勢が、一気に前方へと持ち直される。

 

 「――んどりゃあっ!!」

 

 押し出される勢いをそのまま利用し、迅雷を振り下ろす。さきほどとは比べ物にならない加速が乗った一撃だ。

 

 「ちっ!」

 

 だがホープも反応が速い。咄嗟に後方へ跳び、間一髪で回避した。

 

 ――惜しい。

 

 手応えはあったが、決定打には届かない。

 

 「けっ。力技かよ、この野郎」

 

 「ああ。そうかもな」

 

 距離を取ったホープが舌打ち混じりに吐き捨てる。それに対し、自分はあえて薄く笑って肯定した。

 

 確かに今のは力押しだ。だが、それでいい。

 

 それこそが、奴の魔法への対抗手段なのだから。

 

 引き寄せる力に対しては、押し返す力をぶつける。単純だが理にかなっている。しかも威力に関しては、明らかにこちら――ミオの風魔法の方が上だ。

 

 つまり、力の綱引きになれば勝つのはこっちだ。

 

 問題があるとすれば、連携の精度だろう。タイミングがわずかにでもズレれば、さっきのような完璧な形にはならない。即興で組み立てた策ゆえ、身体に馴染むまでは多少時間がかかるはずだ。

 

 だが――問題ない。

 

 こちらの手は、これだけじゃない。

 

 「よし……今度はこっちが反撃する番だ!」

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