転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ー44

 「『今度はこっちの番だ』だぁ~?! 一回うまくいったくらいで粋がんなよ、クソガキが! 対策してきたところで、攻撃が当たらなきゃ意味ねぇだろうが!!」

 

 自分たちの余裕に腹を立てたのか、ホープは罵声を吐き散らしながらナイフを握りしめ、一直線に突進してきた。

 

 ――今度は振り切る前に仕留める気か。

 

 だが、そう簡単にやられてたまるか。

 

 「【吸引】!」

 

 「ッ?!」

 

 迎え撃とうとした瞬間、ホープが再び魔法を発動する。だが今度は一つではない。左右に一つずつ、黒い球体が同時に出現した。

 

 ――二方向から、だと?

 

 「くっ!?」

 

 次の瞬間、両側から強烈な引力が働いた。身体が引き裂かれるように左右へと引っ張られ、思わず両腕が大きく開く。

 

 動けない。

 

 まるで見えない杭に縫い付けられたように、完全に身動きを封じられてしまった。

 

 ――くそ、磔かよ……!

 

 「はっはっはぁ! まずはテメーからだ!」

 

 「サダメー?!」

 

 勝ち誇ったように笑いながら、ホープがこちらへと迫る。ミオの叫びが背後から聞こえた。

 

 だが――焦るな。

 

 まだ終わりじゃない。

 

 冷静に状況を見極めれば、打開策はある。

 

 「ミオ! 左に、さっきのやつ頼む!」

 

 「ッ?! う、うん! わかった!!」

 

 即座に判断し、指示を飛ばす。迅雷は右手にあるが、この状態で振るえば避けられる可能性が高い。ならば――“別の手”を使う。

 

 「押し返せ、逆境の風よ――【追い風の軌跡(テイルド・ローカス)】!!」

 

 ミオの詠唱とともに、激しい風が左方向へと吹き荒れる。

 

 「ははっ! そんなとこ狙ってどうすんだよ?! 剣の次は拳でも使う気かぁ?!」

 

 ホープは嘲るように笑うが、構わない。

 

 狙いはそこじゃない。

 

 風が左側の黒球にぶつかり、引力を押し返す。すると、左腕にかかっていた拘束が一気に緩んだ。

 

 ――よし、動く!

 

 「瞬く光耀よ、我らを照らす道しるべとなれ!」

 

 「……あ゛あ゛っ?」

 

 左腕を前に突き出しながら詠唱する。ホープは完全に油断している。こちらの手札を把握していない上に、自ら距離を詰めてきている。

 

 ――なら、その隙を突くまでだ。

 

 「【ゆらめく炎の光球(フレア・ライト)】ォー!!」

 

 「なっ?!」

 

 放たれたのは、光を強く放つ炎の球。威力は三割ほどに抑えているが、至近距離で浴びればそれで十分だ。

 

 強烈な閃光に、ホープは思わず顔を手で覆う。

 

 視界を奪われたその一瞬――致命的な隙が生まれる。

 

 ――今だ。

 

 「はあっ!!」

 

 光球が後方へ抜け、ホープの視界が回復しかけたその瞬間を狙い、迅雷を振り上げる。

 

 どうやら魔法は、集中が途切れるか何らかの条件で解除されるらしい。右側の引力もすでに弱まっている。

 

 流れは完全にこちらへ傾いた。

 

 この好機――逃すわけにはいかない。

 

 「しまっ……!」

 

 「だあああああっ!!」

 

 振り下ろした迅雷が、ホープの左肩へと叩き込まれる。

 

 確かな手応え。

 

 次の瞬間、刀身から迸る雷がそのままホープの身体を貫いた。

 

 「ぐあああああっ!?」

 

 激しい電流に全身を痙攣させながら、ホープの身体が大きくのけぞる。

 

 ――決まった。

 

 そう確信しながら、自分は次の動きに備えて構えを崩さなかった。

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