「『今度はこっちの番だ』だぁ~?! 一回うまくいったくらいで粋がんなよ、クソガキが! 対策してきたところで、攻撃が当たらなきゃ意味ねぇだろうが!!」
自分たちの余裕に腹を立てたのか、ホープは罵声を吐き散らしながらナイフを握りしめ、一直線に突進してきた。
――今度は振り切る前に仕留める気か。
だが、そう簡単にやられてたまるか。
「【吸引】!」
「ッ?!」
迎え撃とうとした瞬間、ホープが再び魔法を発動する。だが今度は一つではない。左右に一つずつ、黒い球体が同時に出現した。
――二方向から、だと?
「くっ!?」
次の瞬間、両側から強烈な引力が働いた。身体が引き裂かれるように左右へと引っ張られ、思わず両腕が大きく開く。
動けない。
まるで見えない杭に縫い付けられたように、完全に身動きを封じられてしまった。
――くそ、磔かよ……!
「はっはっはぁ! まずはテメーからだ!」
「サダメー?!」
勝ち誇ったように笑いながら、ホープがこちらへと迫る。ミオの叫びが背後から聞こえた。
だが――焦るな。
まだ終わりじゃない。
冷静に状況を見極めれば、打開策はある。
「ミオ! 左に、さっきのやつ頼む!」
「ッ?! う、うん! わかった!!」
即座に判断し、指示を飛ばす。迅雷は右手にあるが、この状態で振るえば避けられる可能性が高い。ならば――“別の手”を使う。
「押し返せ、逆境の風よ――【
ミオの詠唱とともに、激しい風が左方向へと吹き荒れる。
「ははっ! そんなとこ狙ってどうすんだよ?! 剣の次は拳でも使う気かぁ?!」
ホープは嘲るように笑うが、構わない。
狙いはそこじゃない。
風が左側の黒球にぶつかり、引力を押し返す。すると、左腕にかかっていた拘束が一気に緩んだ。
――よし、動く!
「瞬く光耀よ、我らを照らす道しるべとなれ!」
「……あ゛あ゛っ?」
左腕を前に突き出しながら詠唱する。ホープは完全に油断している。こちらの手札を把握していない上に、自ら距離を詰めてきている。
――なら、その隙を突くまでだ。
「【
「なっ?!」
放たれたのは、光を強く放つ炎の球。威力は三割ほどに抑えているが、至近距離で浴びればそれで十分だ。
強烈な閃光に、ホープは思わず顔を手で覆う。
視界を奪われたその一瞬――致命的な隙が生まれる。
――今だ。
「はあっ!!」
光球が後方へ抜け、ホープの視界が回復しかけたその瞬間を狙い、迅雷を振り上げる。
どうやら魔法は、集中が途切れるか何らかの条件で解除されるらしい。右側の引力もすでに弱まっている。
流れは完全にこちらへ傾いた。
この好機――逃すわけにはいかない。
「しまっ……!」
「だあああああっ!!」
振り下ろした迅雷が、ホープの左肩へと叩き込まれる。
確かな手応え。
次の瞬間、刀身から迸る雷がそのままホープの身体を貫いた。
「ぐあああああっ!?」
激しい電流に全身を痙攣させながら、ホープの身体が大きくのけぞる。
――決まった。
そう確信しながら、自分は次の動きに備えて構えを崩さなかった。