「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?」
雷を纏った迅雷の一閃が直撃し、ホープは膝から崩れ落ちるように地面へと倒れ込んだ。
手応えは十分。今の一撃は確実に効いたはずだ。
「ミオ、縛るものあるか? 今のうちに拘束しておきたい」
「え、えーっと……ちょっと待ってね。たしかロープ持ってきてたはずだから……ポーチの中に……」
ミオが慌てて荷物を探り始める。
その間に、自分は倒れたホープへと近づこうとした――その時だった。
「……うっ、うぅ……この……クソガキどもがぁ……!」
「なっ?!」
倒れたままのはずのホープが、呻き声とともにこちらを睨みつけていた。
気絶していない……だと?
あり得ない。
今の一撃は、リーチこそ短いが確実に意識を刈り取る程度の電圧はあった。現に他の連中は一撃で沈んでいる。
それなのに、なぜこいつだけが――。
「……どういうことだ?」
思わず足を止め、警戒を強める。
身体を鍛えている? いや、見た限りそこまでの肉体ではない。
ならば――特異体質か?
雷に対する耐性を持つ異常体質、《イディオーション》の可能性も一瞬よぎるが、それも違う気がする。奴の魔法との関連性も薄いし、そもそもダメージ自体は確実に通っているように見える。
ならば――。
「……まさか、部分魔力強化《パージング》か?!」
その可能性に思い至り、思わず声が漏れる。
あの土壇場で、身体の一部に魔力を集中させて防御力を底上げしたのだとすれば、辛うじて耐えた理由にも説明がつく。
だが――。
「……」
内心で舌打ちする。
一介の悪党の頭が、基礎とはいえ魔力強化を使いこなしていることに、驚きを隠せない。
部分魔力強化や脱兎跳躍《ラジャスト》といった技術は、ある程度の鍛錬を積まなければ習得できないものだとばかり思っていた。
だが、どうやらそれは思い込みだったらしい。
「て、めぇらみてぇな……才能ある奴には……分からねぇだろうなぁ……」
「……?」
地面に突っ伏したまま、ホープがかすれた声で呟く。
意識が朦朧としているのか、その言葉は途切れ途切れだが――どこか妙に生々しい。
「俺らみてぇな、才能のねぇ連中はな……他人から奪い尽くさなきゃ……生きていけねぇんだよ……」
「……何の話だ?」
眉をひそめる。
話の意図がまるで見えない。
「そうでもしねぇと、生き残れねぇ……この世界はな……そういう風にできてんだよ……!」
「……さっきから、何を言っている?」
問い返すが、会話が噛み合っているのかどうかすら怪しい。
「へへへ……社会がどれだけ理不尽で、不平等で……残酷かって話だよ……」
「……正直、いまいち理解できないんだが?」
率直にそう告げる。
すると、ホープはかすかに笑みを浮かべた。
「問題ねぇよ……今から教えてやる……!」
その言葉と同時に――。
奴の手が、ゆっくりと懐へと伸びる。
「ッ?!」
反射的に身構える。
次の瞬間、ホープが取り出したのは――
手のひらほどの大きさの、白い棒状の物体だった。
「それは……!」
嫌な予感が、背筋を走る。
ただの道具ではない。
そう直感させる、不気味な存在感を放っていた。