転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第6章ーおまけ

 リコリスから魔薬を受け取ってから、およそ半月。俺は久しぶりに、かつて自分が通っていた都市――ソワレルへと足を踏み入れていた。

 

 石畳の道、整然と並ぶ建物、人の流れ。どれも見覚えがあるはずなのに、どこか遠いもののように感じられる。たった半年ほど離れていただけだというのに、まるで別の世界に来たかのような違和感があった。

 

 「ホープさん、わざわざこんな都会まで来て、何するんすか?」

 

 隣を歩くルーフェスが、興味半分といった調子で尋ねてくる。

 

 こいつとは、つい先日とある町の酒場で知り合った。酒の席で意気投合し、その流れで向こうから仲間に加わりたいと申し出てきたのだ。年は俺より一つ下だが、元は情報屋として裏社会を渡り歩いていたらしく、相当危ない橋も渡ってきたらしい。

 

 もっとも、一人で活動するには限界があったのだろう。厄介な連中に目を付けられるリスクも高く、かといって大きな組織に属すれば今度は内部でのしがらみやトラブルに巻き込まれる。そこで目を付けたのが、俺という“程よい規模の存在”だったわけだ。

 

 要するに、俺を隠れ蓑にするつもりだったのだろう。

 

 だが、それはこちらにとっても都合がいい。情報屋としての腕は確かだし、今後タリスターの花を各地から回収していく上で、情報は何より重要になる。時間のかかる作業になるのは目に見えている以上、いずれ仲間は必要になると思っていた。

 

 そういう事情もあり、俺はルーフェスの申し出を受け入れた。こうして、俺は初めて“仲間”と呼べる存在を手に入れたのだった。

 

 そのルーフェスを連れて、俺は再びソワレルの地に立っている。

 

 「……ちょっと野暮用だ」

 

 短く答えると、ルーフェスは首を傾げる。

 

 「野暮用、ねぇ。タリスターの花を集めるんなら、別にこんな目立つ場所じゃなくてもよくないっすか?」

 

 「それは後回しでいい。その前に、どうしても片付けておきたいことがある」

 

 「片付けておきたいこと……?」

 

 訝しげな視線を向けてくるが、詳しく説明する気はない。これはあくまで、俺個人の問題だ。

 

 しばし歩いた後、俺は足を止めると、懐から二つの魔道具を取り出した。

 

 「これを使え」

 

 差し出したのは、黒いマントと一足のブーツ。

 

 「これって……魔道具っすか?」

 

 「ああ。【気配殺し《サイン・キラー》】のマントと、【完全沈黙《パーフェレンス》】のブーツだ」

 

 どちらもリコリスを通じて闇取引で手に入れた代物だ。本来なら自分で使うつもりだったが、隠密行動に長けた人間に持たせた方が効果は高いと判断した。

 

 ルーフェスは興味深そうにそれらを手に取り、軽く状態を確かめる。

 

 「へぇ……こりゃまた、とんでもないモン持ってますね」

 

 「それがあれば、そう簡単には見つからないはずだ」

 

 「で、何を調べればいいんです?」

 

 ようやく本題に入る。俺は少しだけ視線を前に向け――遠くに見える建物を捉えた。

 

 かつて自分が通っていた場所。全てが狂い始めた場所。

 

 「……魔法学園の一年生が、次に受ける派遣任務の行き先だ」

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