「っはあぁぁぁぁ……受からなかったら夏休みなしとか、マジで言ってんのかよ~?」
「うぅ……実技だけなら受かる自信はあるのでござるが、筆記は絶望的でござるよ~」
ホームルームが終わった後も、教室の中は期末試験の話題で持ちきりだった。もちろん、明るい話題ではない。ギリスケとマヒロも机に突っ伏したまま、ぶつぶつと不満を漏らしている。
だが、その気持ちは自分にもよく分かった。筆記試験だけでも十分大変だというのに、そのうえ実技試験まである。さらに、もし落第すれば貴重な長期休暇まで失うのだ。学生にとってそれがどれほど痛いことか、想像するまでもない。
なんとしてでも合格しなければならない。頭ではそう分かっていても、課される条件があまりにも厳しすぎて、皆のやる気はなかなか上がらないようだった。
『勉強なら私得意だから、マヒロちゃんに教えてあげよっか?』
「それはかたじけないでござるよ、フィー殿~」
そんな重苦しい空気の中、フィーが優しく声をかけると、マヒロは今にも泣きそうな顔で礼を言った。
そういえば、フィーは中間試験で学年トップの成績を取っていた。一方でマヒロは、全教科ぎりぎりで赤点を回避したほどだ。ここまで正反対の成績の二人が親友というのもなかなか珍しい。だが、フィーが教えてくれるなら、マヒロの成績も多少は改善するだろう。たぶん。
「あっ、それなら放課後、みんなで勉強会しようよ。図書室とかでやるのはどう?」
『いいね。みんなで協力すれば、筆記はなんとかなるよ』
「うむ、それは名案でござるな」
「まっ、寮に帰って一人で勉強しようとしても集中できねーしな。さんせーい」
「サダメもそれでいいでしょ?」
「うん。俺もそのほうがいいかな」
『よし、じゃあ今日から放課後はみんな図書室に集合だね』
フィーの一言をきっかけに、ミオが勉強会を提案し、そのまま今日から放課後に図書室で勉強会を開くことが決まった。
自分も勉強にはそこまで自信があるわけではないし、フィーに教えてもらえるならありがたい。ギリスケの言う通り、寮で一人きりで勉強しても集中できないことが多い。そう考えると、この勉強会はかなり助かる話だった。
「ん?」
話がまとまった直後、ソンジさんからもらった携帯が一度だけ小さく震えた。
この携帯には彼女の連絡先しか登録されていない。となれば、今の着信はソンジさんからのメールだろう。朝から突然連絡してくるなんて、いったい何の用だろうか。
「……」
こっそり携帯を開き、メールの内容を確認する。
そこには、
『放課後、私の部屋に来てクレメンス』
と、一言だけ書かれていた。
最後の妙な言い回しはひとまず置いておくとして、また何か魔道具の実験でも手伝ってほしいのだろうか。
勉強会ももちろん大事だが、ソンジさんの魔道具の研究を手伝うのも自分にとっては有意義な経験になる。今後のためにも、彼女からの頼みをあまり無下にはできない。
とはいえ、勉強会をすっぽかすわけにもいかない。
――少しだけ顔を出して、そのあと図書室に向かえばいいか。
そう考え、自分は携帯をそっと閉じた。