それからその日の放課後。皆に事情を説明した自分は、彼女の研究室へと足を運んでいた。
「いやー、いつも悪いね」
「別に構いませんけど、これから皆で勉強会をする予定なので、なるべく手短に済む用件だと助かります」
「ああ、期末試験か。大変だねえ、みんな」
「? ソンジさんは期末試験、受けないんですか?」
「私は見ての通り研究で忙しいからね。テストとか諸々は免除されてるのさ」
「へえ……そうなんですね」
現在、自分はいつも通り――下着の上に白衣だけを羽織った格好のソンジさんと、他愛のない会話を交わしていた。前々から気になってはいるが、彼女は年中あの格好で過ごしているのだろうか。本人に聞けば、また妙にからかわれるのが目に見えているため、この疑問は胸の内に留めておくことにする。
それはさておき、試験が特別免除されているという話には、正直少しだけ羨ましさを覚えた。もっとも、彼女は彼女で相当忙しいのだろう。以前、授業にはほとんど出ていないと言っていたし、魔道具の研究というのも並大抵の労力でできるものではないはずだ。
「それにしても、勉強会なんて懐かしいなあ。高校生のときに友達とやった以来だよ」
「俺も似たようなもんです。……ってことは、今は一人で勉強してるんですか? ああ、でもソンジさんは試験免除されてるなら、勉強する必要もないのか」
「そんなことはないさ。研究には知識が不可欠だからね。私だって教科書に目を通したり、図書室の本を読み漁ったりはしてるよ。魔法は奥が深い。調べれば調べるほど、新しい可能性が見えてきて面白いんだ」
「そんなことで、魔道具の研究ってできるものなんですか?」
「あのね、それだけで済むなら私も毎日授業に出てるさ。あとは試行錯誤して経験を積むことも大事だよ。机上の理論だけじゃ、魔道具は生み出せないからね」
「あはは……ですよね」
軽く笑って誤魔化しつつも、彼女の言葉には妙な説得力があった。知識と実践、その両方が揃って初めて成果に繋がる――それは魔道具に限らず、あらゆる分野に通じる話なのかもしれない。
「よし、この話はこのくらいにしようか。君も予定があるんだろうし、今日はさっさと本題を片付けよう」
「はい!」
お茶を飲みながらしばらく雑談を楽しんだあと、彼女は自分の都合を気遣って本題に入った。そういうところはしっかりしている人だと、改めて感じる。
――できれば、その配慮を服装にも回してほしいところだが。
「……なあに見てんの? お・に・い・ちゃん?」
「……」
思った矢先、ニヤニヤとした表情でわざとらしく胸元を強調してくる彼女を見て、自分は無言のまま視線を逸らした。どうやら自覚はあるらしい。となると、なおさら質が悪い。
そんなやり取りを挟みつつも、彼女の研究の手伝いを小一時間ほどこなす。作業自体はそれなりに神経を使うものの、魔道具の仕組みを間近で見られるのはやはり興味深かった。
やがて作業を終え、軽く挨拶を交わした後、自分は研究室を後にする。
向かう先は、約束していた図書室。
仲間たちが待つ勉強会へと、足早に向かうのだった。