転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー10

 あれから一週間が経過し、いよいよ今日から期末試験が始まる。魔法学園の一年生は、一日目と二日目に筆記試験、三日目に実技試験という日程だ。実技試験は広い場所と時間を要するため、一斉には行えず、三年生が一日目、二年生が二日目、そして一年生が三日目という順で実施されるらしい。

 

 「皆、おはよう」

 

 「おはよう、サダメ」

 

 『サダメ君、おっはー』

 

 「おう。おはよう」

 

 「……」

 

 学園へ向かう道すがら、いつもの面子が揃い、軽く挨拶を交わす。しかし、その中で一人だけ明らかに様子がおかしい人物がいた。

 

 「ここの問題の数式はこうで、こうなるから答えはこうなって……ぶつぶつ……」

 

 朝からぶつぶつと呟きながら、歩きつつ数学の問題集を解いているマヒロだ。その集中力は凄まじく、周囲の声などまるで耳に入っていない様子で、自分の存在にすら気づいていない。試験直前まで知識を詰め込もうとしているのだろう。

 

 『マヒロちゃん、あれからずっと頑張ってたからね。寮でも三人で一緒に勉強してたんだよ』

 

 「へえ……あいつ、ちゃんとやってたんだな」

 

 フィーの言葉を聞き、思わず感心する。正直なところ、マヒロの性格を考えれば、途中で投げ出している姿の方が容易に想像できた。むしろ、その光景が妙に現実味を帯びて思い浮かぶほどだ。それでも彼女がここまで真面目に取り組んでいるということは、赤点だけは何としても回避したいのだろう。

 

 「たしかに。あいつのことだから、途中で逃げ出してると思ってたぜ」

 

 「俺も同感だな」

 

 皆の反応も似たようなものだったが、それだけに今のマヒロの姿は意外であり、同時に少しだけ見直すきっかけにもなっていた。

 

 『もし皆が試験に受かったら、夏休みにどこか行こうって話になってね。多分、それが一番の理由かな』

 

 「なるほどな。それなら納得だ」

 

 理由を聞いて、すぐに腑に落ちた。目標があるだけで、人はここまで変わるものなのかと妙に感心してしまう。

 

 『その話で思い出したけど、サダメ君たちも一緒に行こうよ』

 

 「俺は問題ないよ。行くなら一度実家に帰ってからになるけど」

 

 「俺も全然いいぜ! 行くならやっぱ海だろ、海!」

 

 「海か……うん、いいね。楽しそう」

 

 『よし、決まり! 早く夏休み来ないかなー。ねえミオちゃん、水着買いに行こうよ』

 

 「うん、いいよ。せっかくだし、皆で買い出しに行くのも楽しそうだね」

 

 「その前に、まず試験を乗り越えないとな」

 

 そんな会話の流れで、自然と話題は夏休みへと移っていく。まだ先の話ではあるが、皆で予定を立てるだけで気分が高揚し、不思議と試験に対するやる気も湧いてくる。マヒロが必死に勉強している理由も、今ならよく分かる気がした。

 

 やがて学園へ到着し、それぞれの教室へ向かう。そして数時間後――ついにその時が訪れた。

 

 「それでは、試験を開始する」

 

 教室に静寂が満ち、緊張感が一気に高まる。配られた問題用紙に視線を落とし、深く息を吸う。ここまで積み重ねてきたものを信じ、ただ目の前の問題に向き合うしかない。

 

 ――転生勇者が死ぬまで、残り3978日。

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