期末試験三日目。筆記試験は無事に終了し、残すは実技試験のみとなった。試験会場は、いつも授業で使用しているあの野原だ。とはいえ、実技試験の内容については事前に詳しい説明がなかったため、何を行うのか見当もつかない。周囲を見渡せば、同じように不安と期待が入り混じった表情を浮かべる生徒たちがざわざわと小声で話し合っている。
自分も例外ではなかった。むしろ、試験内容が不透明である分、筆記試験以上に落ち着かない。対策を立てようにも、何が出題されるのか分からなければ準備のしようがないのだ。もっとも、コールスタッシュ先生から「基礎を怠るな」と言われていたこともあり、魔法の練習と走り込みだけは欠かさず続けてきた。それがどこまで通用するかは、やってみなければ分からないが。
「いやー、ようやく身体を動かせるでござるな。ここ最近は日課の鍛錬を控えめにしていたゆえ、少々物足りなかったでござるよ。今日は思う存分動いてもよいのでござるよな、サダメ?」
「……あ、ああ。多分そうだと思うけど……相変わらず元気だな、マヒロ」
周囲が緊張感に包まれる中、マヒロだけはまるで遠足前の子どものように浮き立っていた。筆記試験の間は勉強に集中するため、いつものトレーニングを控えていたらしく、身体を動かしたくて仕方がないのだろう。とはいえ、これもれっきとした試験である。もう少し緊張感を持ってもいいのではないかと思わずにはいられない。
「うむ。拙者は頭を使うより、身体を動かす方が性に合っているでござる。この日を心待ちにしていたでござるよ!」
「そ、そうか……それは何よりだ」
今にも駆け出しそうな勢いの彼女に、こちらは苦笑いを返すしかなかった。つい先日まで問題集とにらめっこしていた姿が嘘のようである。
「そういえば、筆記の方は大丈夫だったのか?」
ふと気になり、マヒロに問いかける。いくら実技が得意でも、筆記でつまずいてしまっては意味がない。
「案ずるなかれ、サダメよ。フィー殿の助力のおかげで、なんとか赤点は免れそうでござる!」
『おー、それはよかったよかった』
マヒロは親指を立て、満面の笑みで答えた。その様子からは、確かな手応えと余裕が感じられる。近くで聞いていたフィーも、ほっとしたように胸を撫で下ろしていた。共に努力してきた成果が出たことを、素直に喜んでいるのだろう。最初の絶望的な状況を思い返せば、確かに大きな進歩と言える。
「皆、揃っているかな?」
「「っ!?」」
そんなやり取りをしていると、背後から声がかけられた。振り返ると、そこにはリーフさんの姿があった。どうやら、いよいよ実技試験が始まるらしい。
「今日は少し長くなるかもしれねーから、トイレに行きたい奴は今のうちに済ませておけよ」
さらに、コールスタッシュ先生の低い声が響く。周囲を見れば、リーフさんのほかにも三人の教師が集まっていた。いずれも普段の魔法授業で指導してくれている面々であり、今回の試験官を務めるのだろう。
「ふむ……お手洗いは問題なさそうだね。それでは――これより期末試験、実技の部を開始する!」
リーフさんの宣言とともに、その場の空気が一変する。先ほどまでのざわめきは消え、張り詰めた緊張が場を支配した。いよいよ本番だ。ここまで積み重ねてきたすべてをぶつける時が来たのだと、自然と背筋が伸びるのを感じていた。