「これより試験内容の説明を行う。――と、その前に、いくつか簡単な注意事項を伝えておこう」
リーフさんはそう前置きし、試験内容の発表に入る前に注意事項の説明を始めた。
「まず一つ目。本試験は採点方式ではなく、合否判定によって審査を行う。提示された試験内容をクリアした者は問答無用で合格。逆に、クリアできなかった場合はいかなる理由があろうとも不合格とする。ここまでで質問はあるかな?」
説明を終えたリーフさんは、周囲を見渡しながら静かに問いかける。しかし、生徒たちの間からは特に手は挙がらず、ざわめきも起こらなかった。採点方式ではないという点が有利に働くのか、それとも不利に働くのか――判断は難しいが、少なくとも現時点では大きな混乱はないようだった。
「よろしい。では二つ目だ。試験官はここにいる四名で務める。……まあ、この点については既に察していた者も多いだろうから、特に問題はないね。それでは三つ目に移る」
リーフさんは一拍置き、改めて全員の視線を集める。
「三つ目。本試験は二人一組で行う。組み合わせはランダムで決定し、公平性を保つため、試験官もこの四名の中からランダムで一名が担当するものとする。ここまでで質問は?」
『あのー、質問いいですか?』
その言葉に応じるように、フィーが手を挙げた。リーフさんは穏やかに頷き、発言を促す。
『二人一組ということは、二人で一緒にクリアしないといけないんですか?』
フィーの問いは、多くの生徒が気になっていた点だった。二人で同時に条件を満たす必要があるのか、それとも個々で判定されるのかによって、試験の難易度は大きく変わる。
「いや、クリア自体は一人でも問題ない。ただし、達成できなかった者は当然不合格となる。その点は注意してほしい。二人一組としたのは、あくまで時間効率と難易度のバランスを考慮した結果だ。協力して突破するもよし、各々が異なる方法で挑むもよし――そのあたりは君たちの判断に委ねる。これで答えになっているかな?」
『はい、ありがとうございます』
フィーは納得した様子で頷いた。つまり、必ずしも協力が必須というわけではないが、状況によっては連携した方が有利になる可能性が高い、ということだろう。リーフさんの言い回しから察するに、試験はそれなりに厳しい内容になると考えておいた方がよさそうだ。
「さて、最後の注意事項だ。……これは本来、言うまでもないことだとは思うが、あえて明言しておく。命に関わるような危険行為を行った場合、その時点で強制失格とする」
その言葉には、先ほどまでとは異なる重みがあった。リーフさんは一人ひとりを見据えながら、さらに続ける。
「繰り返しになるが、この学園で教えているのは、人のために役立てる魔法の使い方だ。扱うものが魔法である以上、多少の怪我は避けられない場面もあるだろう。それについては一定の理解を示す。しかし、故意に他者の命を脅かすような行為は、いかなる理由があっても許容できない。――そのことを、よく肝に銘じて試験に臨んでほしい」
「……」
場の空気が一気に引き締まる。誰も軽口を叩こうとはせず、ただ静かにその言葉を受け止めていた。試験とはいえ、魔法を扱う以上、常に危険と隣り合わせであることを改めて突きつけられた気がした。
「試験前に少々重い話になってしまって申し訳ないね」
リーフさんはわずかに表情を緩め、場の空気を和らげるように続ける。
「それでは気を取り直して――これより試験内容を発表する」
再び緊張が高まる。誰もが息を呑み、その言葉の続きを待った。
一体どのような試験が課されるのか。これまでの注意事項から察するに、決して生易しいものではないだろう。
そして、次の瞬間――
「試験内容はズバリ――鬼ごっこだ!」