「第一試合、鬼役が二名を確保。よって鬼側の勝利とする。対象の二名は不合格とする」
淡々と告げられた結果に、観戦ルームの空気が静まり返る。
「……」
第一試合は、あっけない――いや、それ以上に圧倒的な実力差を見せつけられる形で幕を閉じた。ライラック先生が召喚した使い魔の大鷹。その巨体からは想像もつかないほどの機動力と、見上げる者の心を直接圧迫するような威圧感。まさに“空の王者”と呼ぶにふさわしい存在だった。
あれと正面からやり合うなど、自分でも考えたくはない。むしろ、あの使い魔に見つかった時点で敗北がほぼ確定すると言っても過言ではないだろう。問題は、あれほどの巨体を相手に「見つからずに進む」こと自体が極めて困難だという点だ。視認範囲も広いだろうし、あの高度から見下ろされれば、隠れ続けるのは至難の業に違いない。
――見た目に反して、えげつない手を使ってくる。
そんな感想が自然と浮かんだ。
「では、十分ほどのインターバルを挟む。その間に次の組み合わせを決めておこうか」
試合の余韻に浸る間もなく、次の抽選が始まる。結果として選ばれたのは自分ではなく、別の生徒二名。そして鬼役にはリーフさんが選出された。
「えー、第二試合の結果だが、鬼役が二名を確保。よって鬼側の勝利とする。捕まった二名は不合格だ。以上」
簡潔な報告が終わると同時に、再び重苦しい沈黙が場を支配した。
第二試合もまた、容赦のない展開だった。開始直後、一人の生徒が仲間を置き去りにし、風魔法で一気にゴールを目指した。判断としては間違っていなかったはずだ。だが、その目論見はあっさりと崩される。三十秒の猶予が明けた直後、リーフさんが生成した壁に進路を塞がれ、逃げ場を失ったところを檻のような構造物で閉じ込められ、そのまま捕獲されてしまった。
もう一人の生徒も、間もなく発見され、為す術もなく捕らえられる。
――正直、規格外だ。
あくまで推測に過ぎないが、リーフさんの魔法は「想像したものを具現化する」類のもの――いわゆる創造魔法なのではないか。だとすれば、その応用範囲は計り知れない。状況に応じていくらでも最適解を作り出せるとなれば、対処は極めて困難だ。
「……チートにも程があるだろ」
思わず、そんな本音が漏れそうになる。
二試合を終えた時点で、生徒たちはこの実技試験の難易度の高さを嫌というほど思い知らされていた。はっきり言って、絶望的だ。あの教師陣から逃げ切るなど、現実的に可能なのかと疑いたくなる。
魔力感知が封じられていようと、脱兎跳躍が使えなかろうと、そんな制限はほとんど意味を成していない。なぜなら――それらに頼らずとも、教師たちは圧倒的に強いのだから。
「えーっと……とりあえず、第三試合の組み合わせを決めるぞ」
気だるそうに進行を引き継いだコールスタッシュ先生の声が響く。しかし、その言葉は生徒たちの耳には半分も届いていなかった。中には、すでに諦めたようにため息をつく者も現れ始めている。
空気が、重い。
――このままでは、全員不合格になるのではないか。
そんな最悪の予感が、じわじわと広がっていく。
「まずは一人目――マヒロ・トーエン」
「おおー! ついに拙者の出番でござるか!!」
「っ!?」
その瞬間だった。
沈みきっていた空気を吹き飛ばすかのように、場違いなほど明るい声が響いた。嬉々として名乗りを上げたのは、他でもないマヒロだ。
その反応に、思わず周囲の視線が一斉に彼女へと集まる。
重苦しい空気の中で、彼女だけがまるで別の世界にいるかのように、生き生きとした表情を浮かべていた。