「ふっふっふ……待ちかねていたでござるよ、この時を。このマヒロ・トーエン、一番乗りで試験を突破してみせるでござる!」
自信に満ちたその宣言に、観戦ルームの視線が一斉にマヒロへと集まる。その立ち姿には一片の迷いもなく、むしろここまで沈みきっていた空気を吹き飛ばすような勢いすら感じられた。
実力という点において、彼女がトップクラスであることは誰もが認めている。だからこそ、「もし彼女と組めたなら――」と期待を抱く者がいても不思議ではない。いや、おそらくこの場にいるほとんどの生徒が、同じことを考えているだろう。
かくいう自分も、その一人だった。
願わくば、彼女と組めたら――そう思わずにはいられない。それほどまでに、マヒロという存在は頼もしく、同時に大きな希望でもあった。
「それじゃあ、もう一人を発表する」
コールスタッシュ先生の声が響き、皆の意識が一斉に魔晶映像機へと向けられる。
マヒロのパートナーになれるのは、ただ一人。
固唾を呑んで見守る中、画面に表示された名前は――
「もう一人は……フィー・ミッドブルー」
『やったー!』
明るい声が弾けた。
「おお! フィー殿と一緒でござるか。これは心強いでござるな!」
『私もマヒロちゃんと一緒になれて嬉しいよ。よろしくね、マヒロちゃん!』
「うむ。試験期間中は色々と世話になったでござるし、ここでその恩義を返すとき。思う存分、拙者を頼ってくだされ!」
『ふふっ、期待してるよ!』
抽選の結果、マヒロのパートナーはフィーに決定した。
戦闘を得意とするマヒロと、支援を得意とするフィー。その組み合わせは非常にバランスが良く、相性としては申し分ない。普段からの信頼関係もあるため、連携面でも大きな強みになるだろう。
――これは、もしかすると。
本当に一番乗りでの突破もあり得るのではないか。
そんな期待が、自然と胸の内に芽生える。
「さて、鬼役の方だが……」
二人が和やかに言葉を交わす中、コールスタッシュ先生は淡々と次の抽選へと移った。試験の成否を大きく左右するのは、やはり鬼役だ。どの教師が相手になるかによって、難易度は大きく変わる。
もっとも、この場にいる教師陣はいずれも一筋縄ではいかない実力者ばかりだが。
「ライラック先生。また出番ですよ」
「えー? また私かい」
「抽選はランダムですからね。準備をお願いします」
「はあ……今日は忙しくなりそうだ」
鬼役は再びライラック先生に決定した。
先ほどの試合を見たばかりということもあり、厳しい展開になることは容易に想像できる。あの使い魔の存在は脅威だ。しかし、それを踏まえたうえで、二人がどのような対策を講じるのか――そこが見どころになりそうだった。
「二人とも、頑張ってね」
『うん。行ってきます!』
「うむ。皆でこの試験を突破して、海へ行くでござるよ!」
「ああ。行ってらっしゃい」
三試合目の組み合わせが決まり、会場へと向かう二人に、ミオと自分は声をかけた。
二人の表情には緊張の色はほとんどなく、むしろ楽しんでいるかのような余裕すら感じられる。互いへの信頼があるからこそ、その心境に至れるのだろう。
手を振りながら去っていく背中を見送りながら、自分は心の中でそっと願う。
――どうか、無事に合格してほしい。
そして、この勢いのまま全員が試験を突破し、約束した夏の計画を実現できたなら――それ以上のことはない。