転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー23

 「ピーヒョロロロロ!」

 

 頭上を悠々と旋回する大鷹。圧倒的優位である高所を取り、すでに勝利を確信しているかのようでござるな。

 

 「なら――」

 

 その余裕、叩き落としてくれる。

 

 拙者は刀を一度鞘へと収め、視線を横手の建物へと向けた。

 

 人は鳥のように空を自在に舞うことはできぬ。だが――魔法を用いれば話は別。飛べぬのではない、“飛び方が違う”だけでござる。

 

 「抜刀――鳴雷!!」

 

 三度、雷鳴の踏み込みを発動。同時に地を蹴り、建物へ向けて全力で駆ける。

 

 距離はおよそ五十。踏み切りを誤れば、そのまま激突は免れぬ。

 

 三――二――一。

 

 「はああああっ!!」

 

 刹那、跳躍。

 

 壁面へと叩きつけるように着地し、その反動を利用して即座に上方へと蹴り上がる。

 

 一歩――二歩――三歩。

 

 硝子窓を避けつつ、一定の間隔で壁を駆け上がる。次第に間隔を詰め、速度を加速させていく。

 

 外壁を“走る”という無茶を成立させているのは、鳴雷による瞬発力。わずかでも踏み損ねれば、そのまま墜落――あるいは激突。だが、今はすべてが噛み合っている。

 

 「ピエ――――!?」

 

 ようやく接近に気付いたか、大鷹が驚愕の声を上げる。その表情からは、先ほどまでの余裕が消え失せていた。

 

 「ピエェェェ――――!!」

 

 だが即座に体勢を立て直し、再び風を集束し始める。先ほどの圧殺の一撃――あれをまともに受ければ終わり。

 

 ならば――

 

 「スゥゥ――――」

 

 「はあっ!」

 

 発動の直前、あえて足元の硝子窓を踏み抜いた。

 

 派手な破砕音とともに、拙者の身体はそのまま建物内部へと滑り込む。

 

 「ピエェェェェェェ――――――!!!!」

 

 直後、外壁を叩き潰す風圧が炸裂。窓を破らずそのまま進んでいれば、確実に巻き込まれていたであろう。

 

 「……ふむ。ここならば」

 

 内部は人気のない殺風景な空間。軽く周囲を見渡し、天井へと視線を向ける。

 

 最上階までは、あと三層。

 

 ――十分、届く。

 

 「参る!」

 

 下半身に力を集中させる。床が軋み、崩れかける寸前で一気に解放。

 

 同時に上半身へ【部分魔力強化《パージング》】を施し、衝突時の負荷を最小限に抑える。

 

 「はああああっ!!」

 

 爆発的な跳躍とともに、天井へ激突――そのまま粉砕。

 

 一階、二階、三階。

 

 連続して突き破り、痛みすら置き去りにして一気に上層へと躍り出る。

 

 視界が開けたその先――

 

 巨大な影。

 

 大鷹の腹下が、すぐ目の前にあった。

 

 届く。

 

 今、この瞬間ならば。

 

 「はあっ!!」

 

 天井突破の勢いをそのまま乗せ、拙者は魔妖の刃を真っ直ぐに突き出した。

 

 標的へと、一直線に。

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