転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー24

 「ピエェェェ――――――――!?」

 

 「くっ!?」

 

 魔妖の切っ先は、確かに大鷹の腹部へと突き刺さった。

 

 だが――浅い。

 

 刃が深く食い込むよりも早く、大鷹は本能的に身を捻り、さらに上空へと逃れた。引き抜かれるようにして刀はするりと抜け落ちる。

 

 しまった。

 

 これでは決定打にならぬ。地へ叩き落とすには、あまりにも傷が浅い。

 

 「ピエェェェ――――――――!!」

 

 勝ち誇るように鳴きながら、大鷹はさらに高度を上げていく。

 

 「……」

 

 逃した。

 

 ようやく掴みかけた好機が、指の間から零れ落ちるように遠ざかっていく。

 

 このままでは、もう届かぬ。

 

 どうする――

 

 「ッ!?」

 

 その刹那、脳裏に閃いた。

 

 師範の言葉。

 

 ――攻撃魔法であろうと、応用次第で可能性は無限。

 

 ――使い方ひとつで、この刀でさえ空を駆けられる。

 

 空を、飛ぶ。

 

 今まさに拙者が必要としているもの。

 

 それを――この刀で?

 

 視線を巡らせる。これ以上の高所はない。脱兎跳躍を重ねたところで、あの高度には届かぬ。

 

 ならば。

 

 そこに、“一手”を加えるとしたら――

 

 魔妖に宿る七つの力。そのどれにも飛行そのものの能力はない。だが――

 

 「……これでござるな」

 

 ひとつだけ、可能性がある。

 

 確証はない。むしろ無謀に近い。

 

 だが、躊躇している時間はない。

 

 「……ふぅ」

 

 短く息を整え、覚悟を決める。

 

 「いくでござるよ」

 

 刀を納め、体勢を低く落とす。

 

 次の一手が、勝敗を分ける。

 

 「ふっ!」

 

 崩れかけた足場を蹴り、上方へと跳ぶ。宙に散らばる瓦礫を足場代わりに、次々と踏み越えていく。

 

 一歩でも高く。

 

 一寸でも近く。

 

 わずかな差が、生死を分ける。

 

 「――今でござる!」

 

 最後の瓦礫に足を掛け、脱兎跳躍を発動。

 

 砕け散る破片とともに、身体が一気に宙へと投げ出される。

 

 だが――まだ足りぬ。

 

 ここからが本命。

 

 「抜刀――鎌鼬!!」

 

 空中で刀を抜き放ち、今までで最も強く――最も鋭く――斬撃を“下”へと叩きつける。

 

 風が裂ける。

 

 放たれた鎌鼬は地面へと突き刺さり、その反動として強烈な風圧が巻き上がる。

 

 「ふんぬっ!」

 

 その圧を、足場にする。

 

 身体が、さらに押し上げられた。

 

 「ッ!?」

 

 眼下を見た大鷹の瞳が、明確な驚愕に見開かれる。

 

 無理もない。

 

 空を飛べぬはずの人間が、風を踏み、なおも追いすがってくるのだから。

 

 「ピエェェェ――――――――!!」

 

 大鷹は即座に反応し、さらに上空へと逃れようと羽ばたく。

 

 だが――

 

 「ぐっ……今度こそ、逃がさぬでござるよ!」

 

 歯を食いしばり、視線を一点に固定する。

 

 速度では劣る。持久でも勝てぬ。

 

 ならば、勝機は一瞬。

 

 この距離、この高度、この瞬間。

 

 ――ここで仕留めるしかない。

 

 拙者は風を切り裂きながら、なおも上昇する大鷹へと一直線に迫った。

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