「ピエェェェ――――――――!?」
「くっ!?」
魔妖の切っ先は、確かに大鷹の腹部へと突き刺さった。
だが――浅い。
刃が深く食い込むよりも早く、大鷹は本能的に身を捻り、さらに上空へと逃れた。引き抜かれるようにして刀はするりと抜け落ちる。
しまった。
これでは決定打にならぬ。地へ叩き落とすには、あまりにも傷が浅い。
「ピエェェェ――――――――!!」
勝ち誇るように鳴きながら、大鷹はさらに高度を上げていく。
「……」
逃した。
ようやく掴みかけた好機が、指の間から零れ落ちるように遠ざかっていく。
このままでは、もう届かぬ。
どうする――
「ッ!?」
その刹那、脳裏に閃いた。
師範の言葉。
――攻撃魔法であろうと、応用次第で可能性は無限。
――使い方ひとつで、この刀でさえ空を駆けられる。
空を、飛ぶ。
今まさに拙者が必要としているもの。
それを――この刀で?
視線を巡らせる。これ以上の高所はない。脱兎跳躍を重ねたところで、あの高度には届かぬ。
ならば。
そこに、“一手”を加えるとしたら――
魔妖に宿る七つの力。そのどれにも飛行そのものの能力はない。だが――
「……これでござるな」
ひとつだけ、可能性がある。
確証はない。むしろ無謀に近い。
だが、躊躇している時間はない。
「……ふぅ」
短く息を整え、覚悟を決める。
「いくでござるよ」
刀を納め、体勢を低く落とす。
次の一手が、勝敗を分ける。
「ふっ!」
崩れかけた足場を蹴り、上方へと跳ぶ。宙に散らばる瓦礫を足場代わりに、次々と踏み越えていく。
一歩でも高く。
一寸でも近く。
わずかな差が、生死を分ける。
「――今でござる!」
最後の瓦礫に足を掛け、脱兎跳躍を発動。
砕け散る破片とともに、身体が一気に宙へと投げ出される。
だが――まだ足りぬ。
ここからが本命。
「抜刀――鎌鼬!!」
空中で刀を抜き放ち、今までで最も強く――最も鋭く――斬撃を“下”へと叩きつける。
風が裂ける。
放たれた鎌鼬は地面へと突き刺さり、その反動として強烈な風圧が巻き上がる。
「ふんぬっ!」
その圧を、足場にする。
身体が、さらに押し上げられた。
「ッ!?」
眼下を見た大鷹の瞳が、明確な驚愕に見開かれる。
無理もない。
空を飛べぬはずの人間が、風を踏み、なおも追いすがってくるのだから。
「ピエェェェ――――――――!!」
大鷹は即座に反応し、さらに上空へと逃れようと羽ばたく。
だが――
「ぐっ……今度こそ、逃がさぬでござるよ!」
歯を食いしばり、視線を一点に固定する。
速度では劣る。持久でも勝てぬ。
ならば、勝機は一瞬。
この距離、この高度、この瞬間。
――ここで仕留めるしかない。
拙者は風を切り裂きながら、なおも上昇する大鷹へと一直線に迫った。