転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー27

 「……ふぅぅぅぅぅ」

 

 ようやく致命の一撃を与え、張り詰めていた糸がほどける。

 

 気づけば、呼吸すら忘れかけていたでござるな。

 

 大鷹の右の翼は斬り落とされ、その巨体は制御を失ったまま落下していく。あの瞬間、上ではなく横へ逃れようとした判断が仇となったのであろう。結界への恐れか、それとも咄嗟の本能か――いずれにせよ、勝負を分けた一手であった。

 

 「……ピ……」

 

 背後から、弱々しい声。

 

 翼を失い、もはや戦えぬかに見えた。

 

 「ピ、ピエェェェ――――!!」

 

 「ッ!?」

 

 ――否。

 

 次の瞬間、絶叫が空を裂いた。

 

 それは苦痛の悲鳴ではない。

 

 己を奮い立たせる、魂の咆哮。

 

 「スゥゥゥ――――」

 

 「なっ……!?」

 

 振り返る。

 

 大鷹は、こちらを見据えていた。

 

 残る力をかき集めるように、深く息を吸い込み――その口元へ、再び風が集束していく。

 

 この状況で、なお撃つか。

 

 退くことも、諦めることもせず、最後まで牙を剥く。

 

 「……見事でござる」

 

 空中では、回避は叶わぬ。

 

 まともに受ければ、無事では済まぬであろう。

 

 だが――

 

 「……ふっ」

 

 なぜか、笑みがこぼれた。

 

 これほどまでに命を削り合う戦い、久方ぶり。

 

 胸が熱く、高鳴る。

 

 「天晴。流石は空の王――最後まで折れぬその気概、感服致した」

 

 静かに刀を収める。

 

 礼を尽くすように。

 

 「ならば拙者も、最後まで――戦い抜くでござる!」

 

 息を整える。

 

 これが、最後の一振り。

 

 どの技を選ぶかで、すべてが決まる。

 

 だが――迷いはない。

 

 最速の一閃。

 

 それだけでよい。

 

 先に届いた方が、勝つ。

 

 「抜刀――鳴雷!!」

 

 刹那。

 

 全身を雷が駆け抜ける。

 

 視界が、世界が、引き延ばされる。

 

 魔妖を上段へ。

 

 収束した雷が刃へと集い、その輝きはまさしく落雷そのもの。

 

 時間が、止まったかのように静まる。

 

 そして――

 

 「ピエェェェェェェェェェェェェェェェェェェ――――――――!!」

 

 「落雷斬りぃ――――――――――――――――――――――ッ!!」

 

 交錯。

 

 その一瞬。

 

 互いの刹那がぶつかり合い、世界がひび割れるように軋んだ。

 

 世界が、閃光に裂けた。

 

 拙者の一閃は、大鷹の風が解き放たれるよりも――

 

 ほんの刹那、速かった。

 

 確かな手応え。

 

 雷を纏った刃が、肉を裂き、深々とその身を断ち切る。

 

 次の瞬間、大鷹の放った風はあらぬ方向へと逸れ、虚しく空を切り裂いた。

 

 勝負は――決した。

 

 大鷹の巨体は力を失い、そのまま地へと落ちていく。

 

 拙者もまた、余力を使い果たしながら、ゆっくりと落下を始める。

 

 だが、もはや焦りはない。

 

 この戦い――

 

 拙者の勝ちでござる。

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