第三試合が終了し、マヒロとフィーがボロボロの状態で戻って来た。
二人は肩を支え合うようにして歩いており、その姿だけでどれほど激しい戦いだったのかが伝わってくる。
特にマヒロの消耗は深刻だった。
顔色は青白く、呼吸も浅い。心身ともに限界寸前といった様子で、あれだけの激戦を繰り広げていたのだから無理もないだろう。
「マヒロ! フィーちゃん! 大丈夫!?」
その姿を見た瞬間、ミオが慌てて二人の元へ駆け出した。
自分も釣られるように、その後を追いかける。
『へへ。私はダイジョーブ! でもねー、マヒロちゃん、ゴールした瞬間に意識飛んじゃって』
フィーは笑顔でピースサインを作りながら答える。
だが、その肩にもたれ掛かっているマヒロは、すでに完全に意識を失っていた。
力尽きたようにぐったりしていて、今にも崩れ落ちそうだ。
「大変……! 今すぐ治療しないと!」
ミオは青ざめた表情で駆け寄ると、すぐに治癒魔法を使おうと手を伸ばした。
どうやら、自分の試験がまだ残っていることなど完全に頭から吹き飛んでいるらしい。
まあ、気持ちはよく分かる。
あんな姿を見せられたら、心配しない方が無理だ。
「それなら心配はいらないよ」
「ッ!? リーフ理事長!?」
突如聞こえた落ち着いた声に、思わず肩が跳ねる。
いつの間に現れたのか、リーフ理事長がすぐ側に立っていた。
「こういう事態も想定して、別室に治療班を待機させてある」
理事長は穏やかに微笑みながら、気絶したマヒロの様子を確認する。
「幸い、致命的な負傷は負っていないようだ。しばらく休ませれば回復するだろう。――どれ、失礼」
そう言うと、リーフ理事長はマヒロを軽々とお姫様抱っこで抱え上げた。
そして、そのまま待機室奥の扉へ向かって歩き始める。
実技試験なのだから怪我人が出る可能性は当然ある。
そのための準備をしているのは、ある意味当然なのだろう。
「フィー君も疲れただろう。ベッドを用意してあるから、君も少し休んでいくといい」
『えー、私は別に……』
フィーは気丈に笑ってみせるが、その声にも疲労の色が滲んでいた。
「フィーちゃん。二人とも試験は合格したんだし、無理しないで休んできなよ」
「ああ。俺もその方がいいと思う。フィーだって、あれだけ頑張ったんだからさ。俺達に気を遣わなくていいって」
『ミオ、サダメ……』
二人にそう言われ、フィーは少しだけ困ったように笑う。
本当はこのまま残って応援したい気持ちもあるのだろう。
だが、ここまで来るだけでも相当無理をしていたはずだ。
しばらく悩んだ末、フィーは観念したように肩を竦めると、リーフ理事長の後を追って別室へ向かって行った。
「おい。そろそろ第四試合の組み合わせを発表するぞ」
「ッ!? は、はい!」
二人が去っていく背中を見送っていると、コールスタッシュ先生の声が飛んできた。
どうやら、先生としては早く次へ進めたいらしい。
そうだ。
まだ、自分達の試験は終わっていない。
マヒロ達は乗り越えた。
なら、自分達も続かなければ。
皆で合格し、皆で笑って夏休みを迎えるために。
自分達も、この試験を突破してみせる。