「ほんじゃ、次の組み合わせ発表するぞー」
「……」
気だるそうな口調で進行を始めるコールスタッシュ先生。試験中だというのに、この人は相変わらずマイペースだ。
それはさておき、残る試合はあと七つ。未出場の生徒は十四人。
早く自分の番が来てほしい気持ちはある。だが、いざ呼ばれるとなれば緊張してしまいそうで怖い。変に意識しすぎて、試験に悪影響が出るかもしれない――そんな事ばかり考えてしまう。
「まずはお前らからだな。えーっと、一人目は……サダメ・レールステン」
「は、はいっ!?」
余計な事を考えていた矢先、自分の名前が呼ばれた。思わず背筋を跳ねさせながら返事をしてしまう。
まさか、こんなにも早く呼ばれるとは思っていなかった。
「さて、もう一人だが……」
「……」
問題はここからだ。
誰と組むか――それが、この試験ではかなり重要になる。
正直、ほとんど話した事のない生徒と組むのは避けたかった。互いの手の内も性格も知らない相手と、まともに連携できる気がしない。これまでの試験内容を見ても、各自が好き勝手に動いて突破できるほど甘くないのは明らかだった。
本音を言えば、一番組みたかったのはマヒロだ。だが、今さらそんな事を言っても仕方がない。組み合わせは運任せだ。
せめてミオ辺りと組めればありがたい。魔法の相性も良いし、何より信頼できる。彼女となら、多少無茶な状況でもなんとかなる気がした。
だが――
「ギリスケ・アンドリューズ」
「うげっ!? 俺ぇぇ!?」
抽選の結果、自分の相方はギリスケに決まった。しかも、名前を呼ばれた瞬間に露骨に嫌そうな反応をされる。
……こいつ、自分に何か不満でもあるのか?
「俺、女の子と組みたかったなー」
「……」
どうやら理由は単純極まりない下心らしい。
実にギリスケらしいと言えばらしいが、そんな理由で落ち込まれても反応に困る。
「はあ……俺のカッコいい活躍を、隣で女の子に見てもらおうと思ってたのになー」
「……俺、お前が活躍してるところなんて見た事ないんだが」
呆れ半分でツッコミを返す。
この男、任務では大抵サボっている常習犯だ。真面目に戦っている姿など、ほとんど記憶にない。そんな男が「活躍する」などと言い出しても、説得力が皆無である。
……なんだか急に不安になってきた。
「さて、お前達の相手をする鬼役だが……」
そんな自分達を余所に、コールスタッシュ先生は淡々と進行を続ける。
次に重要なのは、鬼役を担当する教師が誰になるかだ。
正直、誰が相手でも厳しい試験になるのは間違いない。だが、強いて希望を挙げるならライラック先生だろうか。
あの人の切り札である《緋翔の大鷹》は、先ほどの試合でマヒロによって撃破されている。あれほど強力な使い魔を短時間で再召喚できるとは考えにくい。
実際、拘束を解かれた後のライラック先生は、どこか諦めたような様子を見せていた。つまり、少なくとも現時点では、あの大鷹以上の使い魔は存在しない――そう判断できる。
その点を踏まえれば、まだ勝機があるとすればライラック先生が相手の時くらいだろう。
だからこそ、自分は密かにそう願っていた。
しかし――
「……俺だ」
低く響いた声を聞いた瞬間、自分の背筋が凍り付く。
視線を向けた先では、コールスタッシュ先生が気怠そうに片手を挙げていた。
――鬼役は、コールスタッシュ先生。
その事実を理解した途端、自分とギリスケは揃って顔を引きつらせた。
よりにもよって、一番当たりたくない相手を引いてしまったらしい。