転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー41

 先生の手が、頭上から迫ってくる。

 

 触れられたら終わりだ。

 

 ここで捕まれば、自分の試験は終了する。

 

 「【火球《フレール》】!」

 

 瞬時に、自分は右側の建物へ向かって火球を放った。

 

 狙いは先生ではない。

 

 建物そのものだ。

 

 轟音と共に壁面が爆ぜ、巨大な瓦礫が崩れ落ちる。

 

 その崩壊に巻き込まれる形で、瓦礫が頭上にいたコールスタッシュ先生へと降り注いだ。

 

 『ちっ!?』

 

 先生は咄嗟に腕を交差し、防御姿勢を取る。

 

 だが、空中では踏ん張りが利かない。

 

 瓦礫の直撃を受けた先生の身体は、そのまま左側へ吹き飛ばされていった。

 

 「……っ!」

 

 流石に致命傷までは与えられていないだろう。

 

 あの人が、あの程度で倒れるとは思えない。

 

 それでも、時間稼ぎにはなった。

 

 少なくとも、あのまま掴まれて終わる最悪の展開だけは回避できた。

 

 「はぁ……はぁ……っ」

 

 着地した自分は即座に後退する。

 

 崩れた建物が連鎖的に倒壊を始めていた。

 

 巻き込まれる前に離脱しなければならない。

 

 そう判断した自分は、結局そのまま裏通りを使ってゴールへ向かう事にした。

 

 今さら大通りへ戻るのは危険すぎる。

 

 それに、先生の足止めには成功している。

 

 ならば今こそ、ゴールまで距離を稼ぐ最大のチャンス。

 

 一秒たりとも無駄にはできない。

 

 少しでも前へ――

 

 『ったく……あとちょっとだってのによぉぉぉ!!』

 

 「ッ!?」

 

 その考えは、次の瞬間に叩き壊された。

 

 壁へ吹き飛ばされていたはずの先生が、半ばヤケクソのように炎魔法を放ったのだ。

 

 だが――

 

 今までとは威力が違う。

 

 比較にならない。

 

 放たれた炎は一直線に建物を貫通し、そのまま次々と壁や柱を溶かしながら突き進んでいく。

 

 まるで巨大なレーザービームだった。

 

 「くそっ!!」

 

 先生の魔法によって、自分の進行方向にあった建物群が次々と崩壊していく。

 

 まずい。

 

 逃げ場が消える。

 

 このままでは瓦礫の山に押し潰される。

 

 「爆ぜる焔よ。火《か》の球《きゅう》として聚合《しゅうごう》し、眼前に映りし標的へ猛る一投を撃ちかけん――【火球《フレール》】!!」

 

 自分は即座に詠唱を紡ぎ、頭上へ火球を放つ。

 

 威力は八割。

 

 軽傷くらいは覚悟する。

 

 だが、ここで瓦礫に潰されるよりは遥かにマシだった。

 

 「う゛っ!?」

 

 火球は頭上へ降り注ぐ瓦礫を吹き飛ばし、なんとか致命的な直撃を防いだ。

 

 だが、完全には防ぎ切れない。

 

 砕け散った破片のいくつかが頬を掠め、足へ突き刺さる。

 

 鋭い痛みが走った。

 

 先程のように瓦礫そのものを溶かせれば理想だった。

 

 だが、流石にこの量を完全処理する余裕はない。

 

 ……まあ、この程度ならまだ動ける。

 

 問題はそこじゃない。

 

 「なんなんだよ……あの威力……」

 

 思わず呟く。

 

 あんなものをまともに食らったら、一溜まりもない。

 

 いや、それどころか――

 

 骨すら残らない気がした。

 

 あれがコールスタッシュ先生の本気なのか?

 

 もしそうだとしたら、自分は想像以上に危険な相手と戦っている事になる。

 

 『ふぅ……スッキリした』

 

 「……」

 

 その声に振り返る。

 

 先生は、崩壊した建物の奥からゆっくりと歩いてきていた。

 

 どこか爽やかですらある表情。

 

 ……いや待て。

 

 まさかとは思うが、今の攻撃、ストレス発散で撃ったのか?

 

 危うく生徒一人消し飛ぶところだったんだぞ。

 

 『さて――』

 

 先生は肩を鳴らしながら、自分へ視線を向ける。

 

 『これでもう、小細工は使えねぇぞ』

 

 低い声が響く。

 

 逃げ場を失った裏通り。

 

 崩壊した建物の残骸。

 

 そして、真正面から迫る教師。

 

 『そろそろ終わりにしようや、レールステン』

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