「さて、次は六試合目になるかな? それじゃあ、次の対戦カードを発表するよ?」
それからさらに一試合が終わり、試験はとうとう折り返し地点を越えていた。
第五試合は、またしてもリーフ理事長が圧倒的な実力差を見せつけ、ほとんど一方的な展開で終了。結果、現時点での合格者は二組のみとなっていた。
改めて思う。
――この実技試験、想像以上に難易度が高い。
マヒロやサダメですら、かなりギリギリだった。
特にサダメなんて、ほとんど自爆みたいな方法で突破したようなものだ。あれを見た後では、軽い気持ちで「自分も何とかなるかも」なんて到底思えない。
それに、今までの試験を見ていて分かったことがある。
この試験は、個人の強さだけではどうにもならない。
むしろ重要なのは、“連携”だ。
互いを知らない者同士では、どうしても連携にズレが生まれる。誰が囮になるのか、誰が援護するのか、どう動くべきなのか――。その判断が遅れた瞬間、先生達に押し切られて終わってしまう。
実際、これまで落ちた組の多くがそうだった。
息が合わず、互いをカバーしきれず、そのまま崩される。
サダメみたいに、一人で状況をひっくり返す立ち回りができれば話は別なのだろうけど……。
あれは、相応の身体能力と魔法センスがあって初めて成立する芸当だ。
私みたいな普通の生徒が、見よう見まねで真似できるようなものじゃない。
「まずは生徒側からだが、一人目は――ミオ・チヤドール」
「ッ!? は、はいっ!?」
考え込んでいるうちに、いつの間にか抽選が始まっていたらしい。
突然名前を呼ばれ、私は思わず肩を跳ねさせた。
――来た。
いよいよ私の番だ。
ただ名前を呼ばれただけなのに、心臓が嫌なくらい強く脈打つ。喉がカラカラに乾き、手のひらにはじっとりと汗が滲んでいた。
「それで、もう一人の方はー……」
「……っ」
ライラック先生が次の紙へ手を伸ばす。
私の相方。
一体、誰になるの……?
マヒロも、フィーちゃんも、サダメも、ギリスケも、もういない。
気づけば、私の友人達は全員既にチームを組み、それぞれ合格を果たしていた。
つまり――残っているのは、ほぼ知らない人達ばかり。
「……うぅ」
なんだか、妙に取り残された気分だった。
まあ、五人いれば一人余るのは当然だ。だから仕方ないのは分かっている。
分かってはいるのだけれど。
やっぱり不安だった。
私は、マヒロみたいに高火力の魔法を撃てるわけじゃない。
サダメみたいに近接戦闘が得意なわけでもない。
使えるのは補助系や支援系の魔法ばかり。風魔法だって、一応攻撃には使えるけれど、せいぜい石を飛ばして牽制できる程度の威力しか出せない。
そんな力で先生達と正面からやり合うなんて、無理に決まっている。
正直、勝てる未来が全然見えなかった。
だからこそ、せめて――。
「……お願い」
私は胸の前で小さく手を合わせる。
身勝手な願いかもしれない。
けれど、もし許されるなら。
どうか私より戦える人と組ませてほしい。
攻撃役になれる人なら、私は全力で支援できる。援護だって、回復だって、できる限り頑張る。
でも、同じサポート型同士だったら――。
きっと、互いを守りきれない。
だからお願い、神様。
せめて、それだけは。
その条件さえ揃えば、私はちゃんと頑張れる気がするから。
こんな都合のいい祈り方、神父様に見られたら絶対怒られるだろうけど。
でも今は、そんなことを気にしている余裕なんてなかった。
だから、どうか。
私の願いを――。
「アラガ!」
「……え?」
――叶えて、くれた。
確かに、“戦える相手”ではあった。
だが同時に。
それは、サダメへ強い敵対心を向けていた、あの男の名前でもあった。