転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー48

 「……」

 

 「……うそ」

 

 思わず、そんな声が漏れた。

 

 これは完全に想定外だった。

 

 いや、戦力面だけで見れば間違いなく“当たり”だ。むしろ最高クラスと言っていい。

 

 けれど――問題はそこじゃない。

 

 アラガは、入学初日にサダメ達と衝突していた人物だ。

 

 あの時の険悪な空気は今でもはっきり覚えている。まあ、向こうが私個人をどう思っているかまでは分からないけれど。

 

 それでも、私にとっては一番組みたくない相手だった。

 

 だって彼、いつも人を見下しているみたいな目をしているんだもの。

 

 冷たくて、鋭くて、近寄り難い。

 

 とてもじゃないけど、「一緒に頑張ろう」なんて言い合えるタイプには見えない。

 

 絶対に無理。

 

 普段の彼を見ていても、誰かとつるむ気配なんて全く感じない。

 

 いつも一人。

 

 誰かが話しかけようとしても、近寄るなと言わんばかりの空気を纏っている。

 

 孤独を好んでいるのか。

 

 それとも、単純に私達を見下しているのか。

 

 どちらにせよ、協力関係を築くには不安要素が大きすぎた。

 

 「さて、お次は鬼役の方だけれど……」

 

 そんな不安を抱える中、ライラック先生が次の抽選へ移っていた。

 

 残る問題は、鬼役が誰になるか。

 

 現状、ライラック先生は強力な使い魔を使えない状態。

 

 コールスタッシュ先生も、目と耳をやられて本調子ではない。

 

 もし当たるなら、この二人が一番いい。

 

 逆に、最悪なのは――。

 

 リーフ理事長。

 

 そして、まだ一度も出番が回ってきていないキリヤ・オーヴェン先生。

 

 理事長は未だ余力を残していそうだったし、オーヴェン先生に至っては体力を完全に持て余している。

 

 あの二人だけは駄目。

 

 当たった瞬間、難易度が一気に跳ね上がる。

 

 だからお願い。

 

 せめて、あの二人だけは――。

 

 「……鬼役は、キリヤ・オーヴェン先生。お願いします」

 

 「……えぇ?」

 

 思わず、情けない声が漏れた。

 

 希望は儚く散った。

 

 よりにもよって、最悪中の最悪。

 

 私はその場で崩れ落ちそうになる。

 

 「おお? やっと私の番かよ」

 

 対照的に、オーヴェン先生は実に楽しそうだった。

 

 「ったく、出番なさすぎて身体が錆びちまうかと思ったぜ」

 

 そう言いながら、地面に座っていた先生は勢いよく立ち上がる。

 

 そして肩をぐるぐると回しながら、まるで待ちに待った遊びの時間でも始まるかのように笑っていた。

 

 ……気のせいじゃない。

 

 あの人、絶対テンション上がってる。

 

 むしろ、かなり上機嫌に見えるんだけど。

 

 「一応言っておきますけど、試験なんで加減はしてくださいよ?」

 

 そんなオーヴェン先生へ、ライラック先生が苦笑混じりに忠告を入れる。

 

 一見すると冗談っぽい言い方だった。

 

 けれど、その表情にはどこか本気の心配が滲んでいた。

 

 ……ちょっと待って。

 

 先生が“忠告”するレベルってことは、この人、本当に危険なんじゃ……?

 

 「ぁ……」

 

 背筋に冷たいものが走る。

 

 だが、そんなこちらの不安など知ったことかと言わんばかりに、オーヴェン先生は豪快に笑った。

 

 「はははっ! 安心しろって!」

 

 先生は手をひらひらと振りながら続ける。

 

 「流石に私も、手心くらい加えてやるよ!」

 

 ……全然安心できない。

 

 というか、その台詞をこの人が言うと逆に怖い。

 

 そんなことを思っていると。

 

 オーヴェン先生が、ドスドスとこちらへ歩いてきた。

 

 「ってなわけで、お前ら!」

 

 「ッ!? は、はいっ!?」

 

 気づけば、私達の目の前で仁王立ちしていた。

 

 近い。

 

 というか圧が凄い。

 

 立っているだけなのに、まるで巨大な猛獣に睨まれているみたいだった。

 

 空気が重い。

 

 威圧感だけで呼吸が苦しくなる。

 

 私は思わず身体を強張らせた。

 

 一体、何を言うつもりなんだろう。

 

 そんな恐怖混じりの緊張の中――。

 

 「ぶっ殺さねー程度にぶっ殺してやるから、精々頑張れよォ!!」

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