転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー58

 「……お前、何の真似だ?」

 

 突然の乱入に、思考が追いつかない。

 

 ミオ・チヤドール――この女は、どういうわけか俺の邪魔をしてきた。せっかく攻撃の流れを作っていたというのに、防御魔法でそれを阻止されたせいで、オーヴェンが一気に接近しやすくなってしまった。

 

 どういうつもりだ。

 何がしたい。

 

 『はははっ! なんだぁ、仲間割れか!? てめぇら、そんなんでこの試験を突破できると――』

 

 「囲え、四方の木枯らし――【四重の防風(カルテット・プリンド)】!」

 

 『思うなァッ!?』

 

 「ッ!?」

 

 次の瞬間、ミオは再び魔法を発動した。

 

 四方から巻き起こった竜巻が、突撃してきたオーヴェンを包囲するように立ち上がる。暴風の檻に阻まれ、奴の進撃は強引に止められた。

 

 恐らく、あれも防御魔法の一種だろう。

 

 だが、先程のものとは違う。これは身を守るためではなく、明らかに時間を稼ぐための魔法だった。

 

 ……だからこそ、余計に意味が分からない。

 

 なぜ、このタイミングで割って入ってきた?

 そもそも、こいつが前に出る必要などなかったはずだ。

 

 何のために――。

 

 「……分からねぇ」

 

 思わず、そんな言葉が口から漏れた。

 

 こいつの行動は、あまりにも理解不能だった。さっきから何なんだ、この女は。意味不明を通り越して、次第に苛立ちすら込み上げてくる。

 

 「おい。お前、なんで邪魔をした? 答えろ」

 

 「……」

 

 苛立ちを隠さぬまま問い詰める。

 

 わざわざ俺の邪魔をした以上、相応の理由があるんだろうな。返答次第では、こいつを許すつもりはない。

 

 すると、ミオは一瞬怯えたように肩を震わせた後、それでも意を決したように口を開いた。

 

 「……ふ、二人で、この試験を突破しようよ……!」

 

 「……は?」

 

 返ってきた言葉は、あまりにも予想外だった。

 

 俺とお前で試験を突破する?

 

 何を言っているんだ、こいつは。

 

 所詮こいつは、後ろで支援することしかできない女だ。つまり戦闘能力の低い雑魚に過ぎない。

 

 そんな俺より格下の人間が、どの口で物を言っている。まさか、自分がサポートすれば俺が勝てるとでも思っているのか?

 

 ――腹が立つ。

 

 自分の無力さを棚に上げ、他人の力に縋りながら、あたかも自分も戦力になれると思い込んでいる。その浅ましい考え方が、ひどく癇に障った。

 

 「……ふざけるなよ?」

 

 さらに苛立ちを募らせた俺は、そのままミオへ詰め寄った。

 

 そこまでして試験に受かりたいのか。

 手柄が欲しいのか。

 

 舐めやがって。

 

 お前みたいな雑魚一人の援護で、この状況を覆せると本気で思っているのか? つくづく現実を舐め腐っていやがる。

 

 「わ、私は一人じゃオーヴェン先生から逃げ切れないし……。貴方だって、先生の実力を見て勝てる確信があるわけじゃないでしょ? だったら、二人で協力してゴールを――」

 

 「……ぜぇ」

 

 「え……?」

 

 必死に言葉を紡ぐミオを見ながら、俺の怒りはついに頂点へ達していた。

 

 そんなもの、結局は自分のための言い訳に過ぎない。協力だの助け合いだの、聞こえのいい言葉で取り繕っているだけだ。

 

 こいつはどこまで愚かなんだ。

 

 ……どうやら、一度痛い目を見せて理解させる必要があるらしい。

 

 「うぜぇんだよ……失せろ!!」

 

 「がっ!?」

 

 吐き捨てると同時に、俺はミオの腹へ膝蹴りを叩き込んだ。

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