「……お前、何の真似だ?」
突然の乱入に、思考が追いつかない。
ミオ・チヤドール――この女は、どういうわけか俺の邪魔をしてきた。せっかく攻撃の流れを作っていたというのに、防御魔法でそれを阻止されたせいで、オーヴェンが一気に接近しやすくなってしまった。
どういうつもりだ。
何がしたい。
『はははっ! なんだぁ、仲間割れか!? てめぇら、そんなんでこの試験を突破できると――』
「囲え、四方の木枯らし――【
『思うなァッ!?』
「ッ!?」
次の瞬間、ミオは再び魔法を発動した。
四方から巻き起こった竜巻が、突撃してきたオーヴェンを包囲するように立ち上がる。暴風の檻に阻まれ、奴の進撃は強引に止められた。
恐らく、あれも防御魔法の一種だろう。
だが、先程のものとは違う。これは身を守るためではなく、明らかに時間を稼ぐための魔法だった。
……だからこそ、余計に意味が分からない。
なぜ、このタイミングで割って入ってきた?
そもそも、こいつが前に出る必要などなかったはずだ。
何のために――。
「……分からねぇ」
思わず、そんな言葉が口から漏れた。
こいつの行動は、あまりにも理解不能だった。さっきから何なんだ、この女は。意味不明を通り越して、次第に苛立ちすら込み上げてくる。
「おい。お前、なんで邪魔をした? 答えろ」
「……」
苛立ちを隠さぬまま問い詰める。
わざわざ俺の邪魔をした以上、相応の理由があるんだろうな。返答次第では、こいつを許すつもりはない。
すると、ミオは一瞬怯えたように肩を震わせた後、それでも意を決したように口を開いた。
「……ふ、二人で、この試験を突破しようよ……!」
「……は?」
返ってきた言葉は、あまりにも予想外だった。
俺とお前で試験を突破する?
何を言っているんだ、こいつは。
所詮こいつは、後ろで支援することしかできない女だ。つまり戦闘能力の低い雑魚に過ぎない。
そんな俺より格下の人間が、どの口で物を言っている。まさか、自分がサポートすれば俺が勝てるとでも思っているのか?
――腹が立つ。
自分の無力さを棚に上げ、他人の力に縋りながら、あたかも自分も戦力になれると思い込んでいる。その浅ましい考え方が、ひどく癇に障った。
「……ふざけるなよ?」
さらに苛立ちを募らせた俺は、そのままミオへ詰め寄った。
そこまでして試験に受かりたいのか。
手柄が欲しいのか。
舐めやがって。
お前みたいな雑魚一人の援護で、この状況を覆せると本気で思っているのか? つくづく現実を舐め腐っていやがる。
「わ、私は一人じゃオーヴェン先生から逃げ切れないし……。貴方だって、先生の実力を見て勝てる確信があるわけじゃないでしょ? だったら、二人で協力してゴールを――」
「……ぜぇ」
「え……?」
必死に言葉を紡ぐミオを見ながら、俺の怒りはついに頂点へ達していた。
そんなもの、結局は自分のための言い訳に過ぎない。協力だの助け合いだの、聞こえのいい言葉で取り繕っているだけだ。
こいつはどこまで愚かなんだ。
……どうやら、一度痛い目を見せて理解させる必要があるらしい。
「うぜぇんだよ……失せろ!!」
「がっ!?」
吐き捨てると同時に、俺はミオの腹へ膝蹴りを叩き込んだ。