「う、嘘……!? いつの間に……?」
思わず声が漏れた。
オーヴェン先生は、全身に炎を纏っていた。
まさか――あの状態のまま、力づくで【
先生ならやりかねない。
やりかねないけど、それにしたって無茶苦茶すぎる。
あの魔法は、今の私が使える防御魔法の中でも最高クラスの硬度を誇るものだ。普通なら、真正面から破壊するなんて不可能に近い。
それを、真正面からこじ開けてくるなんて――。
本来なら、あと数分は時間を稼げるはずだったのに。
「ちっ……!」
隣でアラガが舌打ちを漏らす。
けれど、今はそれどころじゃない。
――どうする?
彼との会話に意識を向けすぎて、まともな対抗策を考えられていなかった。
このままじゃ、さっきの二の舞になる。
いや、それどころじゃない。
今度こそ、本当に危険だ。
『なんかごちゃごちゃ話し合ってたみてぇだがよォ……私を殺す算段でも立てられたかぁ? あぁ!?』
炎を纏ったまま、オーヴェン先生がゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
その姿だけで圧迫感が凄まじい。
まずい。
ここで再び防御魔法を展開しても、さっきみたいに力任せで破壊される未来しか見えない。
かといって、これ以上先生を止められる方法なんて思いつかない。
【
……いや、無理だ。
私の風魔法程度で、あの先生を止められるわけがない。
『そんじゃあ見せてもらおうかァ!!』
先生が獰猛に笑う。
『第二ラウンド、開始だァァァァァァァァァ!!!!!!』
「ッ!?」
次の瞬間、オーヴェン先生が爆発的な勢いで突進してきた。
速い。
あまりにも速すぎる。
どうする?
逃げる?
でも、アラガとの話はまだ終わっていない。ここで離れれば、また彼は先生と殺し合いを始めてしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。
けれど――だからといって、私一人で先生から逃げ切れるわけが……。
『ぼさっとしてんじゃねぇぞ、チヤドォォォル!!』
「ひっ!?」
怒号と共に、先生が真っ先に私へ狙いを定めていた。
もしかして、さっき邪魔したことを根に持ってる?
……いや、違う。
単純に、先に妨害役を潰すつもりなんだ。
先生の視線は完全に私へ固定されていた。
来る。
凄まじい速度で迫ってくる。
どうするどうするどうする!?
早く詠唱しないと間に合わない――!
『貰ったァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
「くっ……!?」
しかし、もう遅かった。
気付けば先生は、私との距離を一気に詰めていた。
五十メートル圏内。
この距離では、まともな詠唱を完成させる時間なんてない。
ましてや、私の実力では無詠唱魔法で先生を止めることなど不可能だ。
――終わった。
その言葉が脳裏に浮かぶ。
もう駄目だ。
ごめん、お父さん。
ごめん、お母さん。
ごめん、みんな。
そして――ごめん、サダメ。
私は、みんなとの約束を守れそうに――
「遮れ、氷結の盾よ――【
「ッ!?」
『ッ!?』
諦めかけた、その瞬間だった。
突如、目の前に巨大な氷柱が出現した。
建物の半分ほどはあるだろう巨大な氷の盾。
それが、私と先生の間へ割り込むようにそびえ立つ。
――アラガの氷魔法。
「……あ、アラガ?」
私は目を見開いた。
信じられなかった。
だって今、彼は明らかに私を守った。
数分前まで、私を殺そうとしていたはずの彼が。
どうして――。
混乱する私に対し、アラガは振り返らないまま口を開いた。
「……お前、さっき何か言いかけてただろ」
「……え?」
低い声が、静かに響く。
「ここで死なれたら、何を言おうとしてたのか聞けずじまいになる。……それが妙にモヤモヤする」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。
そして彼は、氷の盾の前に立ったまま続ける。
「話の続きは、この試験を終わらせてからだ」
一瞬の沈黙。
その直後――。
「だから協力しろ、チヤドール!!」