『ほれほれぇ! 待ってやってんだから、とっとと見せてみろよォ?』
私は二人へ向けて挑発的に笑いかけた。
何を企んでいるのかは知らねぇが、そろそろ歯ごたえのある戦いがしたくて身体がうずうずしていたところだ。
特にアラガの野郎。
さっきまでは、私を本気で殺そうとするほど剥き出しの殺意を向けてきていた。あの殺気は嫌いじゃねぇ。むしろ、久々にゾクゾクしたくらいだ。
だが、チヤドールに割り込まれてからというもの、あいつは妙に冷静さを取り戻しているように見える。
正直、私は殺し合いになっても構わねぇ。
だが、今のアラガが突っ込んできたところで、結果は見えている。そんな一方的な戦いじゃ、面白くもなんともない。
だからこそ、今の二人がどんな手で私を倒そうとしているのか――そこに興味があった。
さて、どう動いてくる?
「囲え、四方の木枯らし――【
『……あぁ? それ、さっきの魔法か?』
チヤドールが再び風の防御魔法を展開し、私を閉じ込める。
だが、それを見た瞬間、私は思わず眉をひそめた。
なんだぁ?
この魔法は、さっき私が力づくで破ったばかりだぞ。
それなのに、わざわざ同じ手を使ってくるとは。
……もしかして、舐められてんのか?
『……はぁ。その手が私に通じるわけ――』
少々うんざりしながら、炎を纏わせた拳を握り締める。
これをぶち破って、奥の手がないならそのまま決着《ケリ》をつける。そうするか――。
そんなことを考えていた、その時だった。
「凍てつく冷気を囲い、凍結させよ――【
『なっ!?』
次の瞬間、風の防壁の外側から凄まじい冷気が流れ込んできた。
アラガの氷魔法だ。
風魔法の上から、さらに氷魔法を重ねてきやがった。
『ちっ!? くっそ寒ぃなァ!?』
閉鎖された空間の中に冷気が充満し、一気に温度が低下する。
白い息が視認できるほど、周囲は極寒の空気に包まれていた。しかも、風魔法によって冷気が内部を循環しているせいで、余計に寒さが増している。
なるほどな。
まさか、狙いはこれか?
私を凍えさせ、動きを鈍らせるつもりか。
……いや。
私は炎魔法の使い手だぞ。
寒さへの対処なんざ、すぐにできる。向こうもそんなことは理解しているはずだ。
となると、狙いは別。
――魔力切れ。
炎魔法を強制的に使わせ続け、消耗戦へ持ち込むつもりだな。
考えられる可能性としては、その線が濃厚か。
だがなぁ――。
その程度で、私を攻略した気になるんじゃねぇぞ。
たしかに、こいつら二人の魔力量は学年でもトップクラスだろう。下手すりゃ教師連中より上かもしれねぇ。
その点だけなら、素直に評価してやる。
だが、魔力量が同じでも、魔力消費量が違えば話は別だ。
こいつらは恐らく、私が強力な炎魔法を連発して大量に魔力を消耗していると思っているんだろう。
……だが実際は違う。
最初の大技で多少は使った。だが、それ以降はかなり抑えている。必要以上に消耗しねぇよう、ちゃんと調整していた。
一方、あいつらはどうだ?
実力差を感じた焦りからか、かなりの勢いで魔力を消費しているはずだ。
仮に、この防御魔法を破った後にまた展開。さらに破ればまた展開。そんなことを繰り返したらどうなる?
先に魔力が尽きるのは、ほぼ間違いなくあいつらだ。
作戦自体は悪くねぇ。
むしろ、学生にしちゃよく考えてる方だ。
……ただ、相手が悪かったな。
『二人共ォ!!』
私は口元を歪めながら拳を振り抜いた。
『この勝負、私の勝ちみてぇだ――なァ!?』
轟音と共に、二人の融合魔法によって作られた防壁を粉砕する。
そのまま一気に二人を捉えようと踏み込んだ。
――だが。
防壁の向こうで待ち受けていた光景に、私は思わず目を見開くことになる。