転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー66

 防壁を突破した先――そこに二人の姿はなかった。

 

 代わりに設置されていたのは、一枚の巨大な氷壁。

 

 『……あぁ?』

 

 私は思わず眉をひそめる。

 

 氷の壁は大通りを完全に塞ぐほど巨大で、高さも建物三階分ほどある。どうやら私の進行を少しでも遅らせるために作ったらしい。

 

 だが、甘い。

 

 私の跳躍力なら、【脱兎跳躍《ラジャスト》】なんざ使わなくても飛び越えられる。

 

 それくらい、最初の戦闘で見せていたはずだ。まさか頭に入ってなかったのか?

 

 『はっ。ほんっと、どこまで舐めてくれるんだよ……私はァ!!』

 

 若干、頭に血が上るのを感じながら両足に力を込める。

 

 そして次の瞬間、一気に真上へ跳躍した。

 

 視界が一瞬で持ち上がり、巨大な氷壁を軽々と飛び越える。

 

 私の読みが正しければ、あいつらはまだゴールへ到達していないはず。

 

 なら――。

 

 『……はっ! やっぱりなァ!!』

 

 視線の先に、小さな竜巻が二つ見えた。

 

 どうやらチヤドールの風魔法を利用して高速移動しているらしい。

 

 ゴールまでは残り二百メートルほど。

 

 このまま悠長に構えていたら、うっかりゴールを許しかねない。

 

 ……なら、少し本気を出すとするか。

 

 『燃え盛れ、飛龍の翼よ! その翼を以て敵を捉えん――【飛龍の火翼(ドラゴ・フレイグ)】ゥ!!』

 

 空中で詠唱を完成させ、両腕を翼のように広げる。

 

 すると腕に炎の魔力が集束し、次の瞬間、それを後方へ向けて一気に噴射した。

 

 爆発的な推進力。

 

 その勢いを利用し、私は高速で前方へ飛翔する。

 

 【飛龍の火翼(ドラゴ・フレイグ)】。

 

 空中飛行を想定して編み出した、私オリジナルの魔法だ。

 

 制御は少々難しいが、その分速度はかなり出る。流石にライラックの使い魔ほどではないが、追跡には十分すぎる性能だ。

 

 『うぉぉぉっしゃあああああああ!!!!!!』

 

 一気に加速し、あっという間に二つの竜巻を追い越す。

 

 そのままゴール地点へ先回りした。

 

 少し油断はしていたが、追いついてしまえば問題ない。

 

 あとはこの二人を――。

 

 『はっ! お前ら、私を出し抜こうだなんて千年早――……ぞ?』

 

 そこで、私は違和感に気付く。

 

 竜巻の中に、二人の姿がなかった。

 

 あるのは氷の塊だけ。

 

 『……はぁ?』

 

 まさか、あれを二人だと見間違えていたのか?

 

 待て。

 

 じゃあ、本物のあいつらはどこだ?

 

 ゴール判定のアナウンスはまだ流れていない。なら、二人はまだこの会場内にいるはず。

 

 そうとしか考えられねぇ。

 

 だが、疑問が残る。

 

 なぜゴールを目指さない?

 

 なぜ、こんな回りくどい真似をする?

 

 それに――わざわざ私をここへ誘導した意味は?

 

 何を考えてやがる、あのガキ共。

 

 『ッ!?』

 

 その時だった。

 

 突如、どこからか氷塊が飛来する。

 

 反応がわずかに遅れたが、寸前で回避。

 

 氷が地面へ激突し、轟音と共に砕け散った。

 

 間違いない。

 

 アラガの氷魔法だ。

 

 『……』

 

 私は即座に視線を巡らせ、攻撃元を探る。

 

 だが距離が離れているせいで、姿までは見えない。

 

 恐らく遠くの建物から狙撃してきたのだろう。

 

 ……なるほどな。

 

 遠距離からチクチク攻撃して、こっちを苛立たせる作戦か。

 

 ふと、一つの考えが浮かぶ。

 

 ここで待っていれば、いずれあいつらはゴールへ来ざるを得ない。なら、わざわざ探しに行く必要は――。

 

 『……いや』

 

 私は口元を吊り上げた。

 

 『そんなつまんねぇ真似、私の性分じゃねぇなァ!!』

 

 確かに、それが一番確実な勝ち方かもしれない。

 

 だが、そんなダセぇ戦い方を選ぶくらいなら死んだ方がマシだ。

 

 『それによォ!!』

 

 再び飛来してきた氷塊を、炎を纏った拳で叩き砕く。

 

 『好き放題やられてんのもッ!! クッソ面白くねぇしなァァァァァ!!!!』

 

 定期的に飛んでくるアラガの氷魔法。

 

 あれは間違いなく挑発だ。

 

 だったら乗ってやる。

 

 『はっ! おもしれぇ!!』

 

 私は獰猛に笑いながら、地面を蹴り飛ばした。

 

 『てめぇらは私が直々に見つけ出して、とっ捕まえてやるよォ!! あとで文句言うんじゃねぇぞ、クソガキ共ォォォォォ!!!!』

 

 そうして私は、自ら二人を狩りに行くことを決めた。

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