『おらァッ!!』
私は飛来してきた氷塊を拳で叩き砕き、そのまま元いた場所へ向かって駆け抜ける。
だが、戻ろうとするたびに、アラガの氷魔法が執拗に襲いかかってきた。
『ちっ……!』
氷を弾きながら前進するものの、あの魔法は想像以上に厄介だ。
攻撃は複数方向から飛んでくる上、妙な追尾性能まで備わっている。
一度、確認のために高速移動してみたが、それでも氷弾はしっかり私を追尾してきやがった。
足を狙うように軌道を変えてくる辺り、かなり精密に制御されている。
……面倒くせぇ。
撃たれ続けるうちに、私は次第に違和感を覚え始めていた。
遠距離から、高速で動く相手を正確に狙い続ける。
そんな芸当、並の魔法使いにできることじゃない。
しかも、攻撃地点がバラバラだ。
あちこちから氷弾が飛来してくるせいで、位置を特定しづらい。
恐らく――。
『……自動砲台か?』
私は小さく呟いた。
氷魔法で砲台のようなものを設置し、自動で狙撃させている可能性が高い。
使い魔という線もゼロじゃねぇが、ここまで高精度な射撃性能を持つ使い魔なんざ聞いたことがない。
ましてや、氷魔法を扱える個体なんてそうそう存在しねぇ。
そこまで考えると、やはり可能性が高いのは前者だ。
『はぁ……はぁ……くだらねぇ手、使いやがって……!』
氷弾を捌き続けるうちに、徐々に息が上がってくる。
無駄に体力を使わされるし、迎撃のために炎魔法も消耗させられている。
……クソ。
地味にイラつく。
『だが――そんなモン、私には関係ねぇッ!!』
そしてついに、私は元の場所まで戻ってきた。
視線を巡らせると、案の定。
氷壁の陰に隠れるように、二つの氷製砲台が設置されていた。
『……はっ。やっぱりか』
どうやら、私がここへ戻ってきた瞬間を狙えるよう配置していたらしい。
しかも、恐らく魔力感知機能付きだ。
近づいた瞬間、即座にこちらへ照準を合わせてきやがった。
さらに腹立たしいことに、二つとも端へ分けて設置されている。
壊すにもわざわざ動かなきゃならねぇ。
……ほんと、面倒くせぇ野郎だ。
だが同時に、私は感心もしていた。
ここまで明確にイメージを固めて魔法を構築できるとは。
アラガの奴、見た目に反して随分と芸が細かい。
やはり、あいつの魔法の才能は本物だ。
『ちっ――【火球《フレール》】!!』
私は右側の砲台を拳で粉砕すると、続けざまに左側へ火球を放った。
爆炎が炸裂し、砲台が吹き飛ぶ。
こんなもん、わざわざ大技を使う必要もねぇ。
下手すりゃ素手だけでも全部壊せる。
移動するのすら面倒だったが、まあこれで片付いた。
『さて……』
私は肩を鳴らしながら周囲を見渡す。
『野郎共、どこに隠れてやがる?』
口元が自然と吊り上がった。
『私にここまで手間取らせた罰だ。せめて一発くらい、ぶん殴らねぇと気が済まねぇよなぁ?』
そう言いながら、近くの建物へ拳を叩き込む。
轟音。
一撃で巨大な亀裂が走り、そのまま建物全体が崩壊していった。
私をここまでイラつかせたガキは久しぶりだ。
だったら、これくらいの威力で殴ったところで文句は言えねぇだろう。
見つけ次第、問答無用でぶん殴る。
そうでもしなきゃ、この苛立ちは収まらない。
『オラァ!! とっとと出てこいやァァァァァ!!!』
私は怒声を撒き散らしながら、次々と建物を破壊していく。
拳で。
炎で。
蹴りで。
目につくものを片っ端から叩き壊しながら、二人を探し回った。