転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

333 / 352
第7章ー68

 それから数分後――。

 

 『はぁ……はぁ……はぁ……』

 

 私は荒く息を吐きながら、その場に立ち尽くしていた。

 

 周囲に建っていた建物は、すでに全て破壊し尽くしている。

 

 瓦礫の山。

 砕け散った石材。

 崩壊した街並み。

 

 隠れられそうな場所は、もうどこにも残っていない。

 

 これで二人の潜伏場所は全て潰したはずだった。

 

 ……なのに。

 

 『……なんで、どこにもいねぇんだよ!?』

 

 アラガとチヤドールの姿だけが、どうしても見つからなかった。

 

 途中、巻き込まれて潰れた可能性も考えた。

 

 だが、それなら悲鳴の一つくらい聞こえるはずだ。

 

 ここまで無茶苦茶に破壊されておいて、何の反応もないなんて明らかに不自然だった。

 

 『くそっ……!』

 

 思わず舌打ちが漏れる。

 

 魔力感知さえ使えれば、こんな苦労はしない。

 

 だが今回は試験ルールによって封じられている以上、自力で探すしかなかった。

 

 『ちっっっくしょうがァァァァァ!!!』

 

 苛立ちが限界を超え、私は怒鳴り声を上げる。

 

 その勢いのまま、唯一残っていた巨大な氷壁へ拳を叩き込んだ。

 

 轟音。

 

 氷壁は一瞬で粉砕され、砕け散る。

 

 ……その時だった。

 

 『……あ?』

 

 私は違和感に気付く。

 

 氷壁の下に、穴があった。

 

 人一人――いや、二人並んでも通れそうな横幅の穴。

 

 よく見ると、その先はさらに深く続いている。

 

 地面を縦に掘り進めたような、暗く深い穴。

 

 覗き込めば、そのまま吸い込まれそうなほど不気味な闇が広がっていた。

 

 『……ッ!? なんだァ!?』

 

 その瞬間。

 

 ドォン――ッ!!

 

 遠方から爆発音のような轟音が響き渡った。

 

 方向は――ゴール地点。

 

 私は反射的に顔を上げる。

 

 すると、ゴール付近から大量の砂煙が舞い上がっていた。

 

 爆発?

 

 いや、おかしい。

 

 アラガは氷魔法。

 チヤドールは風と治癒魔法。

 

 どちらも、あんな派手に爆ぜるタイプの魔法じゃない。

 

 だが、その時。

 

 穴。

 爆発音。

 消えた二人。

 

 それら全てが、一つの答えへ繋がった。

 

 『……そうか』

 

 私は小さく呟く。

 

 そして次の瞬間、口元が引きつった。

 

 『……そういうことかァ!!』

 

 全部理解した。

 

 あいつらの狙いを。

 

 二人が隠れていたのは建物でも物陰でもない。

 

 ――地下だ。

 

 地面を掘り進み、地下通路を作ってゴール方面まで移動していたんだ。

 

 奴らは魔力感知が使える。

 

 恐らく、ゴール付近にいる他生徒達の魔力を辿り、おおよその位置を把握していたのだろう。

 

 つまり最初から、正面突破する気なんざなかった。

 

 氷壁は穴を隠すためのカモフラージュ。

 

 わざと高く作っていたのも、私の性格を読んでいたからだ。

 

 どうせ私は飛び越えて索敵すると踏んでいたんだろう。

 

 実際、相手を探すなら空から見下ろした方が効率は圧倒的にいい。

 

 高所から視界を確保するなんざ、索敵の基本中の基本だ。

 

 ……だが。

 

 たった一度、私の跳躍を見ただけで、そこまで読んできやがるとは。

 

 『チッ……』

 

 さらに思い返す。

 

 あの自動砲台。

 

 あれは単なる足止めじゃない。

 

 地下を掘るための時間稼ぎだったんだ。

 

 しかも、あれだけ執拗に攻撃され続けていれば、多少地面を掘る音が響いたところで気にも留めない。

 

 ……そこまで計算していたのかもしれない。

 

 『はっ……まさか、こんな結末になるとはな』

 

 私は苦笑混じりに呟いた。

 

 やがてゴール付近の砂煙が晴れていく。

 

 すると、地下から飛び出してくる二人の姿が見えた。

 

 ゴールまでは、もう目前。

 

 今から飛んでも間に合わない。

 

 完全に。

 綺麗に。

 見事なまでに。

 

 私は、あのガキ共にハメられていた。

 

 てっきり、私を倒す作戦でも考えているのかと思っていた。

 

 まさか逃走に徹し、しかもモグラみたいに地下を掘って移動してくるとは。

 

 想像もしなかった。

 

 なんとも呆気ない幕切れだ。

 

 ……だが同時に。

 

 妙に出し抜かれた感覚が残っていて、非常に気分が悪い。

 

 『……あいつら』

 

 私は乱暴にヘッドセットを引き剥がした。

 

 そして、遠くに見える二人を睨みながら吐き捨てる。

 

 『あとで絶対ブチ殺してやるッ!!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。