『アラガ、ミオ・チヤドール。両名のゴール到達を確認。これにて、第六試合を終了とします』
俺達がゴール地点へ辿り着いた瞬間、試験終了を告げるアナウンスが会場全体に響き渡った。どうやら、なんとか試験は突破できたらしい。
「はあ……はあ……つ、疲れたぁ~……!」
ゴールした途端、チヤドールは全身の力が抜けたようにその場へへたり込んだ。大量の魔力と体力を消耗したせいか、肩で荒く息をし、顔色もかなり悪い。
「ふん。お前、やりゃあ出来るじゃねえか」
「はあ……はあ……えっ?」
倒れ込むチヤドールに声を掛けると、何故か奴は目を丸くしてこちらを見上げてきた。今の言葉、そんなに意外だったのか?
「あ、えっと……えへへ。ありがとう」
だが次の瞬間、奴は照れ臭そうに笑みを浮かべ、素直に礼を言ってきた。別に大した事を言ったつもりはない。事実を口にしただけだ。なのに、何故そんなに嬉しそうにしているのか、正直よく分からない。
「そ、それにしても、よくあんな方法思いついたね」
「あん? ……ああ。別に褒められるような事じゃねえ。あの作戦も、お前が出来るかどうか次第だったしな」
息を切らしながらも話しかけてくるチヤドールに、俺はぶっきらぼうに返した。
実際、あの作戦は成功する保証などどこにもなかった。むしろ成功率は五分五分――いや、それ以下だっただろう。
何せ、俺は他人と協力する事自体に慣れていない。その上、あの場で即興で立てた作戦だ。チヤドールの魔法技術と、オーヴェンに気付かれない事。その二つが噛み合わなければ成立しない綱渡りだった。
まず、チヤドールの風の防御魔法でオーヴェンの視界を遮る必要があった。だが、あの魔法は既に一度破られている。防御魔法単体では長くは持たないと判断し、俺の氷魔法で外側から補強した。さらに内部へ冷気を充満させる事で、奴の体温と体力を奪う役目も兼ねさせた。
その隙に、チヤドールの風魔法で地面を掘削。地下通路を作り、ゴール地点まで移動する。
俺の氷魔法でも地面を砕く事くらいは出来たかもしれない。だが、風魔法の“切断力”と“回転力”の方が掘削には向いていると判断した。
とはいえ、チヤドールにそこまで精密な魔法操作が出来るのかは未知数だった。大量の魔力消費にも耐えなければならない。結果的に成功したから良かったものの、本当に一か八かの賭けだった。
「まさか、私の風魔法をドリルみたいに使うなんてね。そんな発想、私には全然なかったよ」
「風魔法は破壊力こそ低いが、切れ味には優れてる。それを掘削機みてえに回転させれば使えるかもしれねえと思っただけだ。魔法ってのは結局、どれだけ具体的にイメージ出来るかだからな」
「へぇ~……イメージを変えるだけで、私にもあんな事出来るんだ。やっぱアラガって賢いよね」
「ふん。お前が単純に馬鹿なだけだろ」
「はははっ。否定できないかも」
「……」
俺の皮肉に対しても、チヤドールはまるで気にした様子もなく笑っていた。
さっきから妙に馴れ馴れしく話しかけてくるが、勘違いされても困る。俺は好きでこいつを助けた訳じゃない。あくまで試験を突破する為、その場限りで協力しただけだ。
……そう。そういう事のはずなのに。
「……そういや、さっきの話だが……」
ふと、試験の最中に奴が言いかけていた言葉を思い出す。気になっていた俺は、今度はこちらから問いかけようとした。
――だが。
「すぅ……すぅ……」
「……は?」
気付けばチヤドールは、地面に座り込んだまま静かな寝息を立てていた。
どうやら緊張の糸が切れたらしい。限界まで魔力を使い切った反動で、そのまま眠ってしまったようだ。