「皆、実技試験ご苦労だったね。これにて期末試験の全日程を終了とする。今回合格した者も、惜しくも届かなかった者も、それぞれ自分の課題が見えたことだろう。各々その課題を乗り越え、更なる成長を期待しているよ。……まあ、今日は先生達も随分お疲れのようだからね。私の話はこの辺りにしておこう。知っての通り、明日は休校だ。今日はゆっくり身体を休めてくれたまえ。それでは――解散!」
リーフさんの締めの挨拶と共に、長かった期末試験はようやく幕を閉じた。
あれから数時間が経過し、実技試験も無事終了。張り詰めていた空気から解放された生徒達は、皆どこか気の抜けた表情を浮かべていた。
無理もない。半日以上もの間、狭い待機室で緊張感に晒され続けていたのだ。待っているだけでも相当な疲労だっただろう。
自分は比較的早めに試験が終わったうえ、その後ほとんど眠っていたせいか、思っていたほど疲労感はなかったが。
「んーっ! やっと終わったでござるな!」
『うん。とりあえず、皆受かってよかったよね』
「そうだね。最初はどうなることかと思ったけど」
「ああ。危うく本当に死にかけたけどな」
解散の合図と同時に、生徒達はそれぞれ談笑しながら待機室を後にしていく。自分達もその流れに乗り、最後の方で部屋を出ようとしていた。
そういえば、待機中に皆の会話を少し耳にしたのだが、どうやら自分達は全員実技試験に合格したらしい。ミオも無事突破できたようで何よりだ。
……しかし、話を聞く限り、彼女の相方はあのアラガ。そして鬼役はオーヴェン先生だったという。
よくそんな地獄みたいな組み合わせでゴールまで辿り着けたものだ。
あの二人の性格を考えれば、試験そっちのけで殺し合いが始まっていても不思議じゃない。
「おい。ちょっと待て」
「ッ!? アラガ……」
そんな事を考えていた矢先、不意に後ろから低い声が飛んできた。
振り返ると、そこには壁に寄り掛かるように立つアラガの姿。相変わらず鋭い眼光でこちらを見据えている。
なんだ?
また喧嘩でも吹っかけるつもりか?
一瞬、自分が余計な事を考えていたのが顔に出たのかとも思ったが、流石にそんな訳はないだろう。だが、嫌な予感しかしなかった。
「……ちょっと面《つら》貸せ」
「……?」
だが、返ってきた言葉は予想していたものとは少し違っていた。
面を貸せ?
つまり話があるという事か。
「お、俺に言ってる?」
念のため、自分を指差して確認する。
この場でアラガと因縁があるのは自分くらいだろうし、当然こちらに向けられた言葉だと思ったのだが――
「いや。お前だ、チヤドール」
「ッ!? ミオに?!」
予想は完全に外れた。
アラガが視線を向けていたのは、自分ではなくミオだった。
何故だ?
一体、何を考えている?
「……付いてこい」
「ちょっ!? お、おい待て……!」
何の説明もなしに歩き出そうとするアラガを、慌てて呼び止める。
理由も聞かされないまま、ミオをあいつに付いて行かせるなんて危険すぎる。せめて用件くらい聞かなければ納得できるはずがない。
だが――
「……うん。わかった」
「ッ!?」
『ミオ!?』
驚く自分達をよそに、ミオはまるで何かを察していたかのように、小さく頷いた。
そして迷いなく、アラガの後を追って歩き出していく。
その背中を見送りながら、自分は言いようのない不安を胸の奥に感じていた。