転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ー72

 「皆、実技試験ご苦労だったね。これにて期末試験の全日程を終了とする。今回合格した者も、惜しくも届かなかった者も、それぞれ自分の課題が見えたことだろう。各々その課題を乗り越え、更なる成長を期待しているよ。……まあ、今日は先生達も随分お疲れのようだからね。私の話はこの辺りにしておこう。知っての通り、明日は休校だ。今日はゆっくり身体を休めてくれたまえ。それでは――解散!」

 

 リーフさんの締めの挨拶と共に、長かった期末試験はようやく幕を閉じた。

 

 あれから数時間が経過し、実技試験も無事終了。張り詰めていた空気から解放された生徒達は、皆どこか気の抜けた表情を浮かべていた。

 

 無理もない。半日以上もの間、狭い待機室で緊張感に晒され続けていたのだ。待っているだけでも相当な疲労だっただろう。

 

 自分は比較的早めに試験が終わったうえ、その後ほとんど眠っていたせいか、思っていたほど疲労感はなかったが。

 

 「んーっ! やっと終わったでござるな!」

 

 『うん。とりあえず、皆受かってよかったよね』

 

 「そうだね。最初はどうなることかと思ったけど」

 

 「ああ。危うく本当に死にかけたけどな」

 

 解散の合図と同時に、生徒達はそれぞれ談笑しながら待機室を後にしていく。自分達もその流れに乗り、最後の方で部屋を出ようとしていた。

 

 そういえば、待機中に皆の会話を少し耳にしたのだが、どうやら自分達は全員実技試験に合格したらしい。ミオも無事突破できたようで何よりだ。

 

 ……しかし、話を聞く限り、彼女の相方はあのアラガ。そして鬼役はオーヴェン先生だったという。

 

 よくそんな地獄みたいな組み合わせでゴールまで辿り着けたものだ。

 

 あの二人の性格を考えれば、試験そっちのけで殺し合いが始まっていても不思議じゃない。

 

 「おい。ちょっと待て」

 

 「ッ!? アラガ……」

 

 そんな事を考えていた矢先、不意に後ろから低い声が飛んできた。

 

 振り返ると、そこには壁に寄り掛かるように立つアラガの姿。相変わらず鋭い眼光でこちらを見据えている。

 

 なんだ?

 

 また喧嘩でも吹っかけるつもりか?

 

 一瞬、自分が余計な事を考えていたのが顔に出たのかとも思ったが、流石にそんな訳はないだろう。だが、嫌な予感しかしなかった。

 

 「……ちょっと面《つら》貸せ」

 

 「……?」

 

 だが、返ってきた言葉は予想していたものとは少し違っていた。

 

 面を貸せ?

 

 つまり話があるという事か。

 

 「お、俺に言ってる?」

 

 念のため、自分を指差して確認する。

 

 この場でアラガと因縁があるのは自分くらいだろうし、当然こちらに向けられた言葉だと思ったのだが――

 

 「いや。お前だ、チヤドール」

 

 「ッ!? ミオに?!」

 

 予想は完全に外れた。

 

 アラガが視線を向けていたのは、自分ではなくミオだった。

 

 何故だ?

 

 一体、何を考えている?

 

 「……付いてこい」

 

 「ちょっ!? お、おい待て……!」

 

 何の説明もなしに歩き出そうとするアラガを、慌てて呼び止める。

 

 理由も聞かされないまま、ミオをあいつに付いて行かせるなんて危険すぎる。せめて用件くらい聞かなければ納得できるはずがない。

 

 だが――

 

 「……うん。わかった」

 

 「ッ!?」

 

 『ミオ!?』

 

 驚く自分達をよそに、ミオはまるで何かを察していたかのように、小さく頷いた。

 

 そして迷いなく、アラガの後を追って歩き出していく。

 

 その背中を見送りながら、自分は言いようのない不安を胸の奥に感じていた。

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