「うぅ、寒いよぉ……」
「もうちょっとだから、急かさないでよ!」
作業を終え、暖を取ろうと焚き火を起こそうとしていた。
だが、火種作りは思った以上に難航している。
他の子達も必死に頑張ってはいるが、そもそも“火の起こし方”を正しく知っている者などいない。
今までサダメがやってくれていたから、なんとかなっていただけだった。
――けれど、彼は結局戻ってこなかった。
「……サダメ……」
朝から彼の姿はない。
引き止める時間もなかった。
昨晩、必死に伝えた私の気持ちは、彼に届かなかったのだろうか。
そう思うと、悔しさが胸を締めつける。
――やっぱり、私はまだ力不足だったのかもしれない。
「……」
ラエルは皆から少し距離を取っていた。
昨晩の一件で、皆が彼を怖がっている。
そして、それを本人も自覚してしまったのだろう。
近くにいるはずなのに、心は遠い。
まるで、皆がバラバラになってしまったようだ。
また以前のように、心を一つにできる日は来るのだろうか。
そんな不安が、胸の奥に沈んでいく。
「それにしても……」
外が騒がしい。
いや、“なんとなく”ではない。明らかに騒がしい。
魔物の足音、話し声、慌ただしい気配。
普段も外は騒がしいが、今日は異様なほどだ。
――何かが起きている。
気になる。
けれど、夜に外へ出るのは危険だ。
あの人達が事情を教えてくれるとも思えない。
扉の近くまで行って、聞き耳を立てれば――
「はあ……はあ……」
「ッ!?」
教会の奥に、荒い息遣いが響いた。
「あっ……」
声の方へ振り向く。
祭壇の辺り――床が抜け落ち、普段は近づかないよう注意している場所。
そこから、誰かが這い上がってきていた。
皆が一斉に駆け寄る。
私も、遅れてその後を追った。
そして、抜け落ちた床から現れた姿を見た瞬間――
息を呑む。
「……サダメ?」
思わず、手で口を覆った。
もう二度と会えないかもしれないと、半ば諦めていた。
だからこそ、目の前の光景が信じられなかった。
「だ、大丈夫っ?!」
驚く間もなく、ボロボロの彼の姿に我に返る。
すぐに駆け寄り、手を差し伸べる。
「はあ……はあ……」
彼の手を掴み、床の縁から引き上げる。
全身汗まみれで、息も絶え絶え。
相当走り回っていたのだろうか。
そして――
「ッ……サダメ、その顔……!」
彼の顔は腫れ上がり、あざだらけだった。
転んでできるような傷ではない。
胸がざわつく。
「ちょっと見せて! 今すぐ治癒魔法を――」
手を伸ばした、その瞬間。
「その前に……皆に、聞いてほしいことがある!」
「えっ……?」
伸ばした手は、振り払われた。
治療よりも優先したい“何か”。
彼の瞳には、かつてないほど強い光が宿っていた。
「皆――」
息を切らしながら、サダメは叫ぶ。
「俺と一緒に、
この村から――脱出しよう!!」
その言葉は、
驚愕と困惑を、教会中に叩きつけた。