転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ーおまけ

 試験が終わってから五日ほどが経過し、ついに筆記試験の結果が返却された。

 

 実技試験に合格していたとはいえ、筆記で赤点を取れば当然夏休みは吹き飛ぶ。そう考えると気は抜けなかったが、実技試験に比べればまだ気楽なものだ。なにせ、赤点さえ回避できればいいのだから。

 

 「おおー! サダメ、歴史のテスト百点ではござらぬか!? 凄いでござるな!」

 

 『へー! サダメ君って歴史好きなんだね』

 

 「まあな。流石に満点取れるとは思ってなかったけど」

 

 全教科の答案が返却された後、教室では自然と点数を見せ合う流れになっていた。

 

 なんだか、この光景も懐かしい。前世でも、友達同士でテストの点を見せ合って騒いでいた記憶がある。もっとも、当時の自分は勉強が得意だった訳ではないのだが。

 

 今世では多少マシになったとはいえ、やはり学校の勉強は難しい。特に数学はいまだに苦手意識が強く、簡単な計算以外になると途端に頭がこんがらがる。

 

 今回も数学だけはギリギリの四十五点。辛うじて赤点を回避しただけだった。

 

 二次関数なんて、前世でも結局ほとんど使う機会はなかったというのに、まさか異世界に転生してまで再び勉強する羽目になるとは。人生、何があるか分からない。

 

 そんな自分だが、歴史だけは別だった。

 

 昔から歴史ものが大好きで、幼い頃から三国志や戦国時代を題材にしたゲーム、漫画、小説、映画などにどっぷりハマっていた。その影響もあり、高校時代も日本史だけは成績が良かった。

 

 そして、この世界の歴史もまた実に興味深い。

 

 魔法という概念が誕生した経緯。魔物との長い因縁。勇者の伝承。そういった話を学園の教科書や図書館の本で知るたびに、つい夢中になってしまう。

 

 本によって微妙に解釈が違っていたり、記述が食い違っていたりするのも面白い。歴史とは結局、見る者によって形を変えるものなのだろう。

 

 ――まあ、その話はまた別の機会にするとして。

 

 自分の歴史の点数を見た皆は、驚いたような顔を浮かべていた。

 

 正直、自分でも驚いている。好きな教科とはいえ、記憶力に自信がある訳ではないし、怪しい問題もいくつかあった。運良く勘が当たった部分もあるのだろう。

 

 それでも、百点という結果はやはり嬉しかった。

 

 中身はいい歳したおっさんだというのに、好きなことに努力して評価されると、こんなにも嬉しいものなのか。

 

 思わず口元が緩みそうになる。

 

 『あっ! そういえばマヒロちゃん、数学どうだった? まだ見せてもらってなかったよね?』

 

 自分が歴史の点数で感心されている中、フィーがふと思い出したようにマヒロへ声を掛けた。

 

 そういえば、マヒロはフィーに付きっきりで勉強を教わっていたんだったか。特に数学は相当苦戦していたらしい。

 

 まあ、それは自分も同じなのだが。

 

 「ふっふっふ! フィー殿と切磋琢磨したあの日々、決して無駄にはしておらぬでござるよ!」

 

 『おおー! 本当に!? それは教え甲斐があったもんだい!』

 

 「なっ!? マジかよマヒロ!? そんな自信あんのか? 何点だったんだよ?」

 

 マヒロはやたらと自信満々だった。

 

 この学園の赤点ラインは四十点。自分ですら四十五点で冷や汗ものだったというのに、ここまで堂々としているということは、かなり伸びたのだろうか。

 

 まさか、自分より上……?

 

 気になった自分は、思わずマヒロに点数を尋ねていた。

 

 「ふっふっふっふー! そこまで気になるなら致し方あるまい! ならば二人とも、拙者のたゆまぬ鍛錬の成果、その目で刮目するでござる!」

 

 そう言うとマヒロは満足げに鼻を鳴らしながら、堂々と答案用紙を掲げてみせた。

 

 ここまで自信満々なのだ。

 

 もしかして、本当に高得点なのか――。

 

           「……よんじゅう、ごてん……?」

 

 だが、自分達の目に飛び込んできたのは、見覚えしかない数字だった。

 

 四十五。

 

 あまりにも予想外すぎて、一瞬見間違いかと思った。

 

 自分は目をこすり、もう一度答案を確認する。

 

 しかし、何度見ても四十五点。どう頑張っても別の数字には見えなかった。

 

 では、この異様な自信は一体何だったのだろうか。

 

 気づけば、自分は真剣にその謎について考察していた。

 

 見栄を張っているようには見えない。中間試験の答案と間違えた訳でもなさそうだ。そもそも問題内容が今回の期末試験そのものだった。

 

 「……マヒロ、お前、中間の時何点だった?」

 

 「む? 四十点ギリギリでござったが? だが今回は、フィー殿のおかげで一問多く解けたでござる!」

 

 『……あ、あはっ。あははは……』

 

 「ふぃ、フィーちゃん?」

 

 『あははははははははははははははははははははははははははははははは!? わ、私の努力とは、一体ぃぃぃ……!』

 

 「フィーちゃん!?」

 

 「おろろ!? ど、どうしたのでござるかフィー殿!? フィーどのー!? しっかりするでござるー!?」

 

 自分がマヒロに追加で質問しようとしていた、その時だった。

 

 突然、フィーが壊れたように笑い始めた。

 

 しかも次の瞬間には白目を剥き、その場にバタリと倒れてしまう。

 

 ここまで様子のおかしくなったフィーを見るのは初めてだった。余程ショックだったのだろう。

 

 ――なお、その後フィーは数日間、高熱にうなされる羽目になったのは言うまでもない。

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