転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第7章ーおまけ4

 「……何?」

 

 「どうしてそんなにサダメを嫌ってるの? 勇者を目指してるから? なんで? 目的は違うかもしれないけど、魔王を倒したいって気持ちは同じなんでしょ? 一人で戦うより、二人で戦った方が絶対いいと思うし、それに――」

 

 「質問が多いな。聞きたいことがあるなら、一つずつ聞け」

 

 「あっ!? ご、ごめん……。……ん? それって、聞いてもいいってこと?」

 

 「ちゃっかり解釈を増やすな。これ以上しつこくされても鬱陶しいだけだからな。……まあ、長話をするつもりはねぇ。分かったなら、手短に済ませろ」

 

 「う、うん!」

 

 勢いのまま疑問を並べ立てた私に、アラガは呆れたような目を向けていた。

 

 それでも追い返したりはせず、ちゃんと話に付き合ってくれている。

 

 理由はどうあれ、これは彼のことを知れる貴重な機会だ。だったら無駄には出来ない。

 

 私は頭の中を整理し、一番気になっていたことから聞いてみることにした。

 

 「じゃあ最初の質問。どうしてサダメをそんなに嫌ってるの?」

 

 入学初日から、アラガは明らかにサダメを敵視していた。

 

 原因が“勇者”という存在にあるのはなんとなく分かる。けれど、それだけであそこまで露骨な敵意を向ける理由が分からない。

 

 私はずっと、そのことが引っかかっていた。

 

 「……俺は、魔王を殺すためだけに生きてきた」

 

 「……」

 

 「いや、正確には――魔王を殺せなきゃ、生きてる意味がねぇ。だから、のうのうと“勇者になりたい”なんてほざいてる奴を見ると、無性に腹が立つ。理由はそれだけだ」

 

 「? 生きてる意味がないって、どういうこと? アラガって、一体……」

 

 「だから質問を増やすなと言ったはずだ」

 

 「だ、だって仕方ないじゃない! 聞けば聞くほど疑問が増えるんだから!」

 

 「……はあ。これだから嫌なんだ。人と話すのは」

 

 「むぅ……」

 

 アラガは露骨に嫌そうな顔をした。

 

 けれど、私だって悪気がある訳じゃない。

 

 むしろ彼の話を聞けば聞くほど、“知りたい”という気持ちが強くなっていくのだ。

 

 魔王を殺すことだけが生きる意味。

 

 その言葉はあまりにも重く、普通じゃない。

 

 しかも、その想いがどうしてサダメへの嫌悪に繋がるのか、まだ完全には理解できなかった。

 

 やっぱり、アラガには分からないことが多すぎる。

 

 でも、だからこそもっと知りたかった。

 

 「えーっと……じゃあ次は――」

 

 「……おい、まだあるのか?」

 

 「うん」

 

 当然のように頷くと、アラガは深いため息を吐いた。

 

 だが次の瞬間、彼の方から不意に問いかけてくる。

 

 「……試験の時から思ってたが、お前、俺が怖くねぇのか?」

 

 「怖い?」

 

 予想外の質問に、私はきょとんとしてしまった。

 

 けれど、彼が珍しく私に興味を向けてくれているのが少し嬉しくて、私はちゃんと答えることにした。

 

 「……うん。最初は普通に怖かったよ? 入学初日からサダメに喧嘩売るし、目つきも怖いし、口も悪いし」

 

 「最後のは余計だ」

 

 「あはは……。でも本当に、試験が始まる前まではかなり怖かった」

 

 「……つまり、試験を通して何か変わったってことか?」

 

 「うーん……どうなんだろ」

 

 私は少し考えてから、素直な気持ちを言葉にする。

 

 「試験中は、とにかく受かりたい一心だったから、“怖い”とか考えてる余裕がなかったんだと思う。でも、オーヴェン先生と本気で殺し合いしようとしてた時、“この人を放っておいちゃダメだ”って思ったんだよね」

 

 「……」

 

 「それから話していくうちに、恐怖よりも好奇心の方が強くなっちゃったみたい」

 

 「好奇心?」

 

 「アラガのこと、もっと知りたいって思ったってこと!」

 

 私は誤魔化さず、真っ直ぐそう答えた。

 

 綺麗事でも同情でもない。

 

 ただ純粋に、彼を知りたいと思ったのだ。

 

 するとアラガは、しばらく無言で私を見つめた後――

 

 「……お前、相当な変態だな」

 

 「なっ!?」

 

 とんでもない一言を放ってきた。

 

 変態?

 

 今の会話のどこにそんな要素があったの!?

 

 思わず目を見開く私をよそに、アラガは面倒臭そうに肩を竦める。

 

 「俺はもう帰る。お前と話してると妙に疲れる」

 

 「どこに疲れる要素があったの!?」

 

 納得いかない。

 

 全然納得いかないけど、アラガはもう完全に話を切り上げる気らしい。

 

 私も試験の疲労がどっと押し寄せてきていたし、これ以上引き止めてもまともに頭が回らない気がした。

 

 今日はここまで、ということなのだろう。

 

 「……チヤドール。これだけは覚えておけ」

 

 「ん?」

 

 立ち去りかけた彼が、不意に足を止めた。

 

 背を向けたまま、低い声で言葉を続ける。

 

 「俺の目的は変わらない。辞める気もさらさらねぇ。もし邪魔立てするつもりなら、お前だろうがレールステンだろうが容赦はしない。それだけだ」

 

 「……アラガ」

 

 その言葉は冷たく突き放すようでいて、どこか痛々しかった。

 

 まるで、自分自身に言い聞かせているみたいに。

 

 背負いたくもない重荷を、無理矢理抱え込んでいるような――そんな寂しさが彼の背中から滲み出ていた。

 

 私は思わず胸が締め付けられる。

 

 やっぱり、この人を放っておけない。

 

 彼を助けたいなら、もっと彼のことを知らなければ。

 

 そう強く思った私は、それ以降、自分から積極的にアラガへ話しかけるようになったのだった。

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