「おお、二人共。おかえり」
「ただいま、神父様」
「神父様、お久しぶりー!」
馬車に揺られること三日。
自分達は、約四か月半ぶりとなる故郷――リーヴ村へと帰って来ていた。
久々に帰郷した自分達を見つけた村人達からは、しばらく歓迎の声を掛けられた。その後、ようやく教会へ辿り着くと、正面玄関では神父様が箒を片手に掃き掃除をしていた。
落ち葉を集めながら作業していた神父様は、自分達の姿を見つけると手を止め、いつもの穏やかな表情を浮かべる。
たった数か月しか離れていないはずなのに、その落ち着いた声を聞いただけで妙な懐かしさが胸に込み上げてきた。向こうからすれば大した期間ではないのかもしれないが、自分にとっては随分長く感じていたらしい。
「長旅で疲れただろう? ちょうど今から昼食にするところだったんだ。一緒に食べるかい? 今ならシスターに頼めばまだ間に合うと思うけど」
「うん。そうしようかな。まだ何も食べてなかったし」
神父様は自然な流れで自分達の荷物を受け取ると、そのまま昼食へ誘ってくれた。
本当に、この人は気配りが細やかだ。
疲れていることを察するだけでなく、自分達がまだ食事を取っていないことまで見抜いている。その上、それを特別なことでもないように当たり前にやってのけるのだから凄い。
「それで、エリカさんは?」
「今日は買い出しに行っているよ。もうそろそろ帰って来る頃だと思うが……っと、噂をすればだな」
教会へ入ろうとしたところで、ミオがエリカさんについて尋ねる。
どうやら食材の買い出しへ出掛けていたらしい。
だが、神父様は途中で何かに気づいたように、自分達の背後を指差した。
振り返ると、遠くから物凄い勢いでこちらへ向かって来る人影が見える。
「あっ、エリカさん! ただい――」
見慣れた修道服を見て、それがエリカさんだとすぐに分かった。
自分は手を振りながら声を掛けようとする。
――その瞬間だった。
「お~か~え~り~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
「ま゛っ!?」
「ッ!? サダメ!?」
こちらを発見したエリカさんは、新幹線顔負けの速度で突撃して来た。
当然、そんな超高速タックルを回避できるはずもなく、自分は真正面からその勢いを受け止める羽目になる。
しかも、エリカさんの体当たりは教会の木製扉すら破壊できそうなレベルの威力を誇っていた。豊満な胸でさえも最早鈍器同然であり、自分の顔面はそこへ勢いよく叩きつけられる。
結果――。
「ぶはっ!?」
盛大に鼻血を噴き出してしまった。
「サダメ、おかえり~! 大丈夫? 学園で怪我とかしてない?!」
「……さ、さっきまでは……大丈夫、でした……」
「サダメ!? しっかりして!? サダメーーーーーッ!!」
エリカさんの熱烈すぎる歓迎を受けた自分は、朦朧とする意識の中でなんとか返事を返す。
だが、その直後。
自分の意識は、ほぼ完全に闇の中へ沈んでいったのだった。