「はあ……帰って来て早々、とんでもない目に遭ったわ……」
日が暮れ、夕食を終えた自分は、一人で風呂に浸かっていた。
どうやら自分は、あの後夕飯前までずっと気絶していたらしい。
一方、エリカさんの方は当然ながら神父様にしっかり説教されたそうだ。
まあ、無理もない。
自分を気絶させた挙句、教会の扉まで半壊させたのだから、流石の神父様でも黙ってはいられなかったのだろう。
「いって!?」
身体を洗っている最中、不意に腹部へ鈍い痛みが走る。
どうやら、あの超高速タックルのダメージがまだ残っているらしい。腹だけでなく鼻の奥も時折ズキズキと痛み、地味に不快だった。
ミオが治癒魔法を掛けてくれたらしいが、流石に痛覚までは完全に消せなかったようだ。となると、この違和感は今日一日くらい続きそうだな。
本当に災難というか、なんというか……。
「にしても、二人共相変わらず元気そうだったな」
湯船に肩まで浸かりながら、ふとそんな言葉が漏れる。
エリカさんに関しては“元気”というより“元気過ぎる”気もしないではないが、それでも健康そうな姿を見られて安心した。
特に神父様は、もう還暦を超えている。
前世の感覚で考えるなら、ちょっとした怪我や病気でも油断できない年齢だ。
実際、前世では父親が少し転んだだけで救急車騒ぎになったことがある。幸い大事には至らなかったものの、高齢者の怪我というのはそれだけ危険なのだ。
だが、神父様は自分が物心ついた頃から一度も体調を崩したところを見たことがない。風邪ですら引いていないのではないかと思う。
自分も比較的丈夫な方だとは思うが、それでも何度か熱を出したことはある。
そう考えると、神父様は相当健康的な生活を送っているのだろう。
酒も煙草もやらない。
食事は規則正しく、朝昼晩きっちり三食。間食もほとんどしない。きっと他にも色々と健康に気を遣っているのだと思う。
それにしたって、一度も風邪を引かないというのは凄い。
もしかすると、単純にとんでもなく丈夫な体質なのかもしれない。
……少しだけ羨ましいな。
だが、どれだけ健康な人間でも、いつかは老い、病み、死ぬ。
人間とはそういう生き物だ。
だからこそ、心配になる。
神父様だけじゃない。
エリカさんだってそうだし、ミオや自分だって、いつ何が起きるか分からない。
だからこそ、今こうして一緒に過ごせる時間を大事にしないとな。
「……つっても、流石に風呂くらいは一人でのんびり――」
「サダメ、私も一緒にいいかしら?」
「ッ!? エリカさん!?」
不意に風呂場の入口から声が聞こえ、自分は反射的に振り返ってしまった。
するとそこには――。
湯気の向こう側で、何の躊躇いもなく全裸の姿を晒しているエリカさんが立っていた。