リーヴ村へ帰ってきてから二日が経っていた。
久々の故郷でゆっくりと羽を伸ばした自分達は、再び村を出るため、朝早くから村の入口付近で馬車を待っていた。
理由はもちろん、夏休み前から計画していた二泊三日の海水浴旅行だ。
その約束の日が、いよいよ二日後に迫っていたのである。
目的地はシッター村。
クルーシア王国でも数少ない海沿いの村であり、ソワレルから南西に位置する港町だ。
ソワレルからなら馬車で一日ほど。
リーヴ村からだと二日ほど掛かる。
本来なら、マヒロのようにソワレルから直接向かった方が効率は良かった。だが、自分達には一度故郷へ戻っておきたい理由があったし、先に済ませておきたい用事も色々あった。だから、この遠回りも後悔はしていない。
「サダメ、ミオ。二人共、くれぐれも羽目を外し過ぎないようにな」
「はい。分かってますよ」
「忘れ物とかは大丈夫? ちゃんと確認した?」
「うん! 昨日のうちにちゃんと見直したから平気だよ!」
朝早くにも関わらず、神父様とエリカさんはわざわざ見送りに来てくれていた。
それだけではない。
二日分の携帯食料まで用意してくれている。
本当に、この二人には感謝してもしきれない。
「そうだ。これを持って行きなさい」
「? これは?」
ふと何かを思い出したように、神父様は懐から小さな箱を取り出した。
中には、ひし形の黄色い結晶があしらわれたペンダントが二つ入っていた。どうやら、自分とミオの分らしい。
「これは、お前達を厄災から守る御守りのようなものだ。毎日、お前達の無事を願って祈りを捧げていた。魔道具ではないから効果があるとは言い切れないが……きっと、神のご加護がお前達を守ってくださるだろう」
「神父様……」
どうやら神父様は、自分達の安全を願いながらこのペンダントへ祈りを込め続けてくれていたらしい。
魔法の力が宿っている訳ではない。
だが、それでも――いや、だからこそかもしれない。
毎日欠かさず祈り続けてくれたという事実だけで、この御守りはどんな高価な魔道具よりも信頼できる気がした。
「いいかい? 海は地上よりも危険な場所だ。遊ぶのは構わない。だが、決して無茶だけはしないように。……私との約束、守れるかい?」
「は、はい!」
ペンダントを受け取った後、神父様は小指を差し出してきた。
指切り――この世界にも、そういう約束の文化は存在しているらしい。
少し懐かしい気持ちになりながら、自分は神父様の小指へ自分の指を絡めた。
「それじゃあ、行ってきまーす!」
「二人共、気を付けてねー!」
やがて馬車が到着し、自分達は荷物を抱えて乗り込む。
神父様とエリカさんへ別れを告げながら、ゆっくりと動き始めた馬車の窓越しに、二人がいつまでも手を振っている姿が見えていた。
――こうして、自分達は再びリーヴ村を後にするのだった。
―転生勇者が死ぬまで、残り3956日。