転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第8章ー16

 「結局、今日は野宿で決定か……」

 

 「しょうがないよ。今回の件は良い教訓だったって事で、前向きに考えようよ」

 

 「そうでござるよ、サダメ! 野宿は野宿で楽しいものでござる!」

 

 二泊三日の旅行、その一日目の夜。

 

 俺達は人気の少ない砂浜で、ようやくテントの設営を終えたところだった。

 

 昼食を食べ終えた後も宿探しを続けていたのだが、結果は惨敗。

 

 何軒回っても満室。

 

 途中、空室のある宿も見つけはしたものの、六人という人数が問題だった。

 

 男女で部屋を分ける必要がある上に、この時期はどこも観光シーズン価格。条件の良い宿は軒並み埋まっており、残っていた部屋も学生の財布には中々厳しい金額だった。

 

 ここで無理をしてしまえば、帰りの交通費や残り二日間の遊興費にまで影響が出る。

 

 そんな事情もあり、俺達は宿泊を諦めてキャンプを選択したのだった。

 

 「まあ、テントが借りられただけでも運が良かったか」

 

 周囲を見回しながら呟く。

 

 日が暮れる前には寝床を確保したいと思い、昼のうちに貸し出し用のテントを二張り借りていた。

 

 人生初のテント設営は想像以上に難しかった。

 

 説明書を見てもよく分からない。

 

 骨組みは絡まる。

 

 布は裏表が分からない。

 

 何度も失敗を繰り返しながら悪戦苦闘した結果、どうにか日没前に完成したのである。

 

 もし経験者がいなかったら、今頃砂浜で途方に暮れていたかもしれない。

 

 「ソンジさん、本当に助かりました」

 

 「ん? 何がだい?」

 

 「テントですよ。経験者が居なかったら危なかったです」

 

 「ははっ。別に大した事じゃないさ」

 

 ソンジさんは肩を竦めて笑う。

 

 意外だった。

 

 普段は研究室に籠もってばかりいる印象だったから、まさかキャンプ経験者だとは思わなかった。

 

 案外、アウトドア派なのだろうか。

 

 それとも前世では陽気なパリピだったりしたのだろうか。

 

 ……いや。

 

 流石にそれは想像出来ないな。

 

 白衣姿でクラブに出入りするソンジさんを思い浮かべてしまい、一人で苦笑する。

 

 そんな事を考えていると――。

 

 「みんなー! 食材買ってきたよー!」

 

 聞き慣れた声が砂浜に響いた。

 

 振り返ると、買い出しへ行っていたミオとフィーがこちらへ歩いて来る。

 

 『はぁ……はぁ……お、重いぃ……』

 

 フィーは両手いっぱいの紙袋を抱えながら、肩で息をしていた。

 

 どうやら相当な重量だったらしい。

 

 「おっ、おかえり」

 

 「二人ともお疲れ様」

 

 俺達は慌てて荷物を受け取る。

 

 テント設営には力仕事が必要だったため、買い出しは二人に任せていたのだ。

 

 仕方なかったとはいえ、少し申し訳ない気持ちになる。

 

 「買い物多めに頼んじゃって悪かったな」

 

 「ううん。別にそれはいいんだけど……」

 

 ミオは苦笑しながら紙袋を下ろした。

 

 そして、中に詰まった大量の食材へ視線を向ける。

 

 「これだけ買って、何を作るつもりなの?」

 

 確かに当然の疑問だ。

 

 袋の中には魚、肉、野菜、パンなどが大量に詰め込まれていた。

 

 紙袋が破れなかったのが不思議なくらいである。

 

 「ふっふっふ……!」

 

 その質問を待っていたと言わんばかりに、ソンジさんが胸を張った。

 

 「キャンプと言えばバーベキュー!」

 

 ビシッと指を突き上げる。

 

 「せっかく海辺まで来たんだ。食事も全力で楽しまなきゃ損だろう?」

 

 「は、はあ……」

 

 ミオは圧倒されながら曖昧に頷いた。

 

 何だろう。

 

 気のせいか、ソンジさんの鼻が少し高くなっているように見える。

 

 もしかして、この人。

 

 最初からバーベキューをやるのを楽しみにしていたのではないだろうか。

 

 そんな疑惑が頭をよぎる。

 

 もっとも、それは俺達も同じかもしれない。

 

 昼間は宿探しで散々だったが、こうして海辺で仲間達と火を囲むのも悪くない。

 

 潮風が吹き抜ける。

 

 空には無数の星が輝き始めていた。

 

 そして――。

 

 その後、俺達は焼き立ての魚や肉を頬張りながら、夜遅くまでバーベキューを満喫するのだった。

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