翌日。自分達は朝早くに起床し、海へ泳ぎに行く準備を進めていた。
自分とギリスケの男組はすぐに着替えを済ませられたが、女性陣は何かと準備に時間が掛かっている様子だった。そのため、彼女達がテントの中で着替えている間、自分達は暇潰しがてら砂浜をぶらぶらと歩き回っていた。
「やっぱ観光地なだけあって広くて綺麗だな」
「そりゃそうだろ。汚いままだったら客なんて来ねえし。定期的に業者か誰かが掃除してるんじゃねえか?」
ギリスケの言葉に頷きながら辺りを見渡す。
どこまでも続く白い砂浜。昨夜は暗くてよく分からなかったが、こうして朝日に照らされた景色を見ると、その美しさがよく分かる。砂浜にはゴミ一つ落ちておらず、隅々まで綺麗に整備されていた。
これだけ広い場所を維持するのは相当な手間だろう。だが、この世界には魔法がある。掃除用の魔法でも存在するのなら、案外そこまで苦労しないのかもしれない。
「にしても、ここって本当に魔物とか出ないんだな。海の近くって魚人系の魔物が住んでて危険だって聞いたことあるけど」
ふと穏やかな海を眺めながら疑問を口にする。
海にも当然ながら魔物は生息している。地上ならタリスターの花によってある程度魔物を遠ざけられるが、海ではそうもいかない。
だからこそ最初は少し不安だった。
しかし事前に調べた限り、この海水浴場の安全性は十分に保証されているらしい。実際、海で魔物による被害が発生した例もほとんどないそうだ。
「たしか沖合の方に特殊な結界を張ってるらしいぜ。魔物だけを通さねえようにする技術が開発されたとか何とか」
「へぇ。結界ってそんな限定的な使い方もできるんだな」
「魔法は奥が深いって言うしな。研究してる奴らも山ほどいるんだろ」
「まあ、それはそうか」
ギリスケの話によると、特殊な魔法技術によって海岸周辺に結界を展開し、魔物の侵入を防いでいるらしい。
ソンジさんのように研究熱心な人が、この世界にも数多く存在するのだろう。そうした人々の努力によって新たな技術が生まれ、文明が発展していく。
そう考えると少し感慨深い。
それにしても、まさかそんな話をギリスケから聞くとは思わなかった。
「それより、みんなまだかよ。野郎の裸見ながら砂浜歩くのもそろそろ飽きてきたぞ。どんな水着持ってきたのか気になってしょうがねえ」
「言い方が最悪なんだよ」
思わず呆れながら突っ込む。
「でも、たしかにそろそろ来てもおかしくない頃だよな」
着替え始めてから既にかなりの時間が経っている。女性陣もそろそろ準備を終えているはずだ。
そんなことを考えていた、その時だった。
「サダメー! お待たせーー!!」
遠くから聞き慣れた声が響く。
「おっ。噂をすれば」
声のした方向へ振り返ると、ミオ達がこちらへ向かって歩いて来るのが見えた。
朝の日差しを背に受けながら手を振るミオ。その後ろにはフィーやマヒロ達の姿も見える。
どうやらようやく準備が終わったらしい。
待ち人の到着にギリスケは露骨に表情を明るくし、自分達も合流するために歩き出した。
これから始まる海水浴に胸を躍らせながら、自分達はミオ達のもとへ向かうのだった。