紫色のビキニに身を包んだマヒロ。その姿は、どこか大人びた色気を感じさせた。細身ながらも引き締まった肢体に、ほどよい膨らみを持った胸と腰のラインが強調され、なかなかに様になっている。だが本人はというと、明らかに浮かない顔をしていた。
「おおお! マヒロちゃんもいい感じじゃん!? 最っ高ーにセクシーだぜ!!」
マヒロのビキニ姿を見た瞬間、ギリスケは目を輝かせ、鼻血を垂らさんばかりに大興奮で褒めちぎった。そこまで嬉しかったとは……少し引くレベルだ。
「そう、でござるか?」
「? どうした? サイズ合ってなかったか?」
ソンジさんが心配そうに声をかける。だがマヒロの表情はますます曇っていく。パッと見ではサイズは合っていそうだが、何か別の理由があるらしい。
「うむ。拙者、普段水浴びをする時は何も着けぬ故、この水着とやらの生地がどうも肌に違和感を覚えるでござる」
どうやらマヒロは水着を着た経験がほとんどないようだった。思い返せば、彼女が水浴びをしている場面を見た時はいつも全裸だったし、普段の下着もサラシと褌という、紙のように薄いものばかり。ナイロンやポリエステルの伸縮性のある素材に慣れていないのだろう。確かに、あの感触は彼女にとっては窮屈で不自然に感じるのかもしれない。
「むー。これでは折角の遊泳も楽しめぬでござる。やはり拙者は何も着けぬ方が……」
「ッ!? ちょ、マヒロ!? 何してんの!?」
違和感に耐えきれなくなったマヒロが、突然ビキニの紐に手をかけて脱ぎ始めようとした。皆の前で堂々と。慌ててミオとフィーが飛びつく。
「ダメダメダメ! こんなところで脱いじゃ絶対駄目だから!?」
「放すでござるよミオ?! 拙者は裸のままで入るでござるから!」
「絶対にダメに決まってるでしょ!? 公衆の面前で全裸とかありえないから!!」
『落ち着いてミオ! マヒロちゃんも、こんな人目のある場所で全裸はマズイって!?』
二人がかりで必死にマヒロを抑え込むが、元々力持ちの彼女を止めるのは容易ではない。まさに猫のキャットファイトのような大騒ぎが始まった。
「うひょおお!? マヒロちゃんのビキニも最高だけど、やっぱありのままの姿も悪くねえな……ぐへへ」
「ちょっと黙ってて!!」
「ぐわぁっ!?」
下心丸出しでニヤニヤしながら眺めていたギリスケが、ミオの風魔法で吹き飛ばされ、海面に豪快に落下した。案の定、ポロリを狙っていたのだろうが、完全に自業自得だ。
「サダメも後ろ向いてて!!」
「ぶへぇっ!? な、なんで俺まで……!」
次の瞬間、何故か自分までも強烈な風圧に襲われ、抵抗虚しく海に放り投げられた。水しぶきが大きく上がる。理由はさっぱりわからない。たまたま視線がマヒロの方に向いていたからだろうか……。ただ巻き込まれただけだというのに、理不尽すぎる。
海の中で浮かび上がりながら、僕はため息をついた。本当に久しぶりに、こんな馬鹿馬鹿しい災難に巻き込まれた気がする。せっかくの水泳の時間なのに、波乱の幕開けとなってしまった。
近くではまだミオとフィーがマヒロを説得し続けている。マヒロは不満げに頰を膨らませつつも、なんとか水着を着直そうとしているようだった。紫のビキニが陽光にきらめき、彼女の白い肌をより魅力的に見せている。
(……まあ、せめてこのまま大人しく泳げばいいんだけどな)
そんなことを思いながら、僕は濡れた髪をかき上げた。今日もまた、賑やかで予測不能な一日になりそうだ。