転生勇者が死ぬまで10000日   作:慶名 安

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第8章ー47

 「ッ!? 救出してほしい、だって?」

 

 「はい! お願いします! 誰か、サダメを助けてください!」

 

 私は周囲の大人達へ向かって頭を下げた。

 

 本当は自分で助けに行きたい。

 

 今すぐ海へ飛び込みたい。

 

 だけど、それが出来ないことくらい分かっている。

 

 今の私では足手まといになるだけだ。

 

 だから誰かに頼るしかない。

 

 悔しくても、情けなくても、それしかサダメを助ける方法がなかった。

 

 「……」

 

 しかし、私の懇願に返ってきたのは沈黙だった。

 

 誰も口を開かない。

 

 重苦しい空気だけが辺りを支配する。

 

 嫌な予感がした。

 

 そして――。

 

 「……駄目だ。それは出来ない」

 

 「……え?」

 

 ようやく口を開いた男性の言葉に、私は思わず耳を疑った。

 

 助けられない?

 

 どうして?

 

 今ここにいるのは腕の立つ冒険者達のはずだ。

 

 なのに、どうして誰も動いてくれないの?

 

 「ど、どうしてですか……?」

 

 焦りを抑えきれず問い返す。

 

 すると男性は険しい表情のまま周囲を指差した。

 

 「周りを見てみろ。海から魔物共が次々と上陸しようとしている」

 

 視線を向けると、確かに海岸線では魔物達との戦闘が続いていた。

 

 倒しても倒しても、新たな魔物が現れる。

 

 「俺達はあれを止めるために集められたんだ。優先すべきは街や住民を守ることだ」

 

 別の冒険者も続ける。

 

 「本来なら騎士団が対応する規模の襲撃だ。だが到着までには時間が掛かる。その間を俺達だけで凌がなければならない」

 

 「ただでさえ人手が足りていない。正直、一人を救出するために戦力を割く余裕なんてないんだ」

 

 さらに別の冒険者が苦々しく言った。

 

 「それに、海の中で魚人族と戦うなんて無謀にも程がある。奴らは海でこそ本領を発揮する種族だ」

 

 その言葉に周囲の冒険者達も無言で頷く。

 

 「奴らの縄張りに飛び込むのは自殺行為だ。悪いが……その仲間のことは諦めてくれ」

 

 「そ、そんな……」

 

 力が抜けそうになる。

 

 言葉が出てこない。

 

 だけど反論も出来なかった。

 

 この人達の言い分は間違っていないからだ。

 

 今、この場で最優先されるべきなのは魔物による被害を抑えること。

 

 ここに集まっている冒険者は僅か数人。

 

 その少人数で何百もの魔物を食い止めようとしている。

 

 そんな状況で一人の救出に人員を割けないのは当然だ。

 

 それに――。

 

 仮に誰かが助けに行ったとしても、待っているのは魚人族の支配する海の中。

 

 授業で習った知識が頭をよぎる。

 

 魚人族は海中において身体能力が飛躍的に向上する。

 

 陸上とは比較にならないほど強くなる種族だ。

 

 まして相手は、あの怪物。

 

 サダメを一撃で海まで吹き飛ばした化け物。

 

 そんな相手と海中で戦うなんて――。

 

 「……」

 

 嫌な想像が頭を過る。

 

 暗い海。

 

 血の色。

 

 沈んでいくサダメの姿。

 

 駄目。

 

 考えちゃ駄目なのに。

 

 どうしても最悪の未来ばかりが浮かんでしまう。

 

 もしこのまま誰も助けに行かなかったら。

 

 もしもう手遅れだったら。

 

 そう考えた瞬間、胸が締め付けられるように苦しくなった。

 

 「……安心するでござるよ、ミオ」

 

 「ッ!?」

 

 その時だった。

 

 聞き慣れた声が私の耳に届く。

 

 振り返ると、治療を終えたばかりのマヒロがゆっくりと立ち上がっていた。

 

 傷だらけの身体。

 

 決して万全ではないはずなのに、その瞳には揺るぎない光が宿っている。

 

 「マヒロ……?」

 

 私が呆然と名前を呼ぶと、マヒロは腰の刀へ手を添えながら真っ直ぐ海を見据えた。

 

 そして。

 

 迷いなど一切感じさせない声で言い放つ。

 

 「サダメは――」

 

 一瞬の静寂。

 

 その場にいた全員の視線が彼女へ集まる。

 

 「拙者が助ける!」

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