「はあ……はあ……」
村の中央付近で、大きな爆発音とともに火煙が立ち上っていた。――きっとサダメが動いたんだ。魔物たちも、その音と火煙の方へ向かっている。行くなら今がチャンス。
私はサダメの指示通り、あの結界を解除するため、魔造種を蓄えている倉庫へ向かっていた。魔物に見つからないよう周囲を警戒しながら進むせいで、道のりがやけに長く感じる。
「おい、なんかあっちで爆発してるみてーけど、俺たちも行った方がいいのかな?」
「いや、念のためここら辺にいろ。もしかしたら奴らがここを通るかもしれん」
「……」
爆発に注意が向いているとはいえ、持ち場を離れない魔物もいる。二人だけとはいえ、見つかれば終わり。私なんか、捕まったらすぐ殺される。作戦成功のため、一瞬たりとも油断はできなかった。
――――――
「……よし。ここは誰もいないみたいね」
なんとか倉庫へ辿り着いた。幸い、この付近に魔物の姿はなく、無事に侵入できた。
「んっ!?」
だが、扉をくぐった瞬間、気分が悪くなる。相変わらず凄まじい魔力の圧。こんな場所に長居したら吐きそうだ。この周辺の警備が薄い理由も、なんとなく理解できる。
「風の精よ。内を汚す邪気より、わが身を守りたまえ。【
魔力酔いを抑える魔法を唱える。これで吐き気は抑えられる……はず。でも、この禍々しい魔力の中でどれほど持つかはわからない。早く見つけなきゃ。
「さて……どこにあるかな」
そうして、倉庫内の探索を始めた。
――――――
「……暗くて、ほんと見えづらい」
探索を始めてすぐ、想像以上に厄介だと悟る。倉庫内は元々薄暗い上、夜の闇が重なり、視界はほぼ真っ暗だ。
「きゃっ!?」
足元もおぼつかず、魔造種の箱に何度もぶつかる。今も箱の角に足を引っかけ、転びそうになった。
「うぅ……もう嫌ぁ……」
さすがに心が折れかける。念のため、サダメがくすねてきたライトを持たせてもらっている。でも、明かりを点ければ魔物に気づかれる危険が跳ね上がる。――これは、見つかった時の目くらまし用。今は使えない。
「でも、この暗さじゃ……儀式に使った魔法陣なんて見つけられっこないよ……」
手探りで探してはいるものの、魔法陣の形状すらはっきり知らない。目で見て判別できるのかも怪しく、不安がじわじわと膨らんでいく。
「……急がないと。サダメも一人で頑張ってる。みんなだって必死なんだから。私も頑張らないと!」
不安になっても、時間は戻らない。私が止まれば、皆の頑張りを無駄にしてしまう。それだけは絶対に嫌だ。
「こうなったら、地道に探すしかないわね!」
そう決めて、這いつくばりながら床を舐めるように見渡す。地道すぎる方法だけど、今の最適解はこれしか思いつかない。木目がかろうじて見える程度の暗さ。それでも探すしかない。
「ん~……いたっ!?」
慎重に進んでいたはずなのに、また木箱に頭をぶつける。最悪だ。
「あっ……」
さらに、ぶつかった衝撃で木箱が倒れ、倉庫に大きな音が響いた。――まずい。音は立てちゃいけないのに。
「……あれ?」
だが、倒れた木箱を見て、違和感が走る。本来、大量の魔造種が詰まっているはずなのに……中は空っぽだった。
「……」
誰かが持ち出した可能性もある。けれど、何かがおかしい。嫌な予感がする。
念のため、他の木箱も調べてみることにした。
「はあっ!」
魔造種が詰まった木箱は、人の力では持ち上げられない。――でも、私は風魔法が使える。風を操り、積まれた木箱を一列だけ浮かせてずらしてみる。
「ッ?! これは……」
木箱を降ろし、並べ直した瞬間――
さらに奇妙な違和感が、はっきりと形を持って現れた。