「多分、あそこにサダメが居るんだと思います」
「ッ!? なんだって!?」
『な、なんでそんなことが分かるの?』
「確証はありませんけど……ソンジさん。その双眼鏡、少し借りてもいいですか?」
「あ、ああ」
胸の中で一つの答えは出ていた。だが、それが本当に正しいのかを確かめる必要がある。
私はソンジさんから双眼鏡を受け取り、海へ視線を向けた。
「あの辺りだ。見えるかい?」
「……はい。見えました」
レンズ越しに広がる海面。その一角だけが不自然なほど明るく輝いている。
しかも光の規模はかなり大きい。
やはり、私の予想は間違っていなかった。
「あの光、多分ですけど……魔法で海中を照らしているんだと思います」
「なるほど。光魔法か。しかし、なぜそんなことを?」
「まだ戦闘中なら目くらましの可能性もあります。でも、あれからかなり時間が経っていますし……もしかしたら私達に居場所を教えているのかもしれません」
『じゃ、じゃあ、あそこにサダメ達がいるってこと?』
「うん。きっとそう」
私は迷いなく頷いた。
あの光には見覚えがある。
サダメが何度も使っていた光魔法だ。
しかも、あれほど大規模な光を生み出せる人なんてそう多くない。
だからこそ確信できた。
あそこにいる。
サダメも、そしてマヒロも。
もちろん確実な証拠があるわけじゃない。
だけど、サダメは無意味に魔法を使う人じゃない。
特に魔力の消耗が激しい大規模魔法ならなおさらだ。
ならば、あの光には必ず意味がある。
そして、その意味は――。
私達への合図。
自分達の居場所を知らせるための救難信号。
そう考えるのが一番自然だった。
ソンジさんがマヒロに渡した結界は三分しか持たないと言っていた。
もし既に結界が消えているのだとしたら。
もし二人が今も海中を漂っているのだとしたら。
残された時間は決して多くない。
早く助けなければ。
一刻も早く地上へ引き上げて、空気を吸わせなければならない。
胸の奥で焦燥感が膨れ上がる。
だが、不思議と恐怖はなかった。
代わりに湧き上がってきたのは、絶対に助けたいという強い想いだった。
「ソンジさん。ここからあの光が見える場所まで、距離は測れますか?」
「双眼鏡に測距機能は付いている。正確じゃないが、大体なら分かるぞ」
「お願いします。教えてください」
『ミ、ミオ? 何をする気なの?』
私はゆっくりと息を吐いた。
荒れていた呼吸はもう落ち着いている。
魔力もまだ残っている。
周囲を見渡しても、砂浜にも海上にも魔物の姿はない。
条件は揃っていた。
今ならできる。
私にだって――。
大切な仲間を救うことができる。
「私が二人を助ける!!」
力強く宣言する。
その瞬間、自分の中に残っていた迷いが完全に消え去った。
無茶だと思われても構わない。
危険だと言われても止まれない。
サダメは何度も私達を助けてくれた。
苦しい時も、辛い時も、いつだって前に立って戦ってくれた。
だから今度は私の番だ。
私が二人を助ける。
絶対に助け出してみせる。
サダメ。
マヒロ。
お願いだから無事でいて。
私は二人のいる海を真っ直ぐ見据えながら、強く拳を握り締めた。
――もう少しだけ、待っていて。