「入るよー?」
軽やかな声とともに、二、三回ノックした後、ドアがゆっくりと開いた。
「ッ!? サダメ?!」
「お、おう……」
ミオは部屋に入るなり、こちらが起き上がっていることに気づいて目を丸くした。驚きと安堵が混じった表情が、なんだか申し訳なくなる。心配をかけてしまったようだ。
「サダメ、もう起きてて大丈夫なの!? 無理してない!?」
「あ、ああ。うん。大丈夫だよ。寝すぎてちょっと頭が痛いぐらいで……」
「頭痛? だったら私の癒しの魔法で治してあげる! すぐに楽になるよ?」
「いや、いい! 本当に大したことないから! すぐ治るって!」
「? そう?」
「はは……ははは……」
本来の目的をすっかり忘れたように、ミオはベッドの側まで駆け寄ってきて、顔を覗き込んできた。優しい手が額に触れそうになり、僕は慌てて体を少し引く。 今、彼女に近づかれるのは極めてマズい。
なぜなら——全裸のマヒロが、自分の薄手の毛布の中に潜り込んで、身体全体を預けるように乗っかっているからだ。しかも自分が起き上がったせいで、彼女の頭がちょうど自分の股間付近に埋まるような体勢になってしまっていた。毛布越しでも、彼女の柔らかい頰と唇が、海パン一枚の布地に密着しているのがはっきりと感じられる。
外から見たら、まるで性行為の最中のような卑猥なシルエットにしか見えないだろう。これは絶対にバレてはいけない。
「んっ……」
「ッ!?」
その瞬間、マヒロが小さくうめきながら口を動かした。しまった。頭を上にしていないせいで呼吸がしづらくなっていたらしい。彼女は無意識に顔を少し動かし、息を整えようとしている。そのたびに、生暖かい吐息が海パン越しに直接当たる。柔らかい唇が布地を優しく擦り、時折舌先が軽く触れるような感覚まで……。
下半身が勝手に反応し始め、僕は必死に歯を食いしばった。
「ん? どうかしたの? 顔が赤いけど……」
「んえっ!? い、いや、何でもない!」
「??」
怪訝そうな顔で首を傾げるミオ。明らかに挙動不審だと思われている。心臓が爆発しそうな勢いで鳴り響く中、なんとか平静を装うが、冷や汗が背中を伝う。
このままではマヒロが目を覚ます可能性もある。最悪の事態だ。なんとかしてミオをこの部屋から出さなければ……。
「ならいいんだけど……あっ、そういえば隣のベッドにマヒロが寝てたはずなんだけど、どこ行ったんだろ?」
「ミ、ミオ! 悪いけど、水を持ってきてくれないか? 寝起きで喉がガラガラで……水分取らないと本当に死にそうなんだ」
「え? あっ、うん! わかった。すぐ持ってくるね!」
「水だけでいい? お腹空いてない?」
「そ、そういえば……なんか腹も空いてる気がする」
「オッケー! ついでにパンとか何か軽いものもらってくるね。ちょっと待ってて!」
「あ、ありがとう……」
なんとか口実を作り、ミオを部屋の外へ送り出すことに成功した。彼女の方から自然にアシストしてくれたおかげで、いい時間稼ぎができた。
ドアが閉まる音を聞いた瞬間、僕は大きく息を吐き出した。心臓の鼓動が今までで一番激しくなっていた。股間ではマヒロの吐息がまだ優しく続き、下半身の反応が完全に収まらない。
(……マヒロ、お前……本当に寝てるのか?)
毛布の中で、彼女の柔らかい裸体が自分の体にぴったりと絡みついている感触が、はっきりと伝わってくる。この危機的状況がいつまで続くのか、僕はただ天井を見つめながら祈るような気持ちで待つしかなかった。